第15話 複雑な解決方法から検討するは、愚か者の証拠です9

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 M22が仮面を付けた半裸の宇宙人プレデターが徘徊するであろう、バル・ベルデ共和国のジャングルにルールスを連れて行く計画を立てている間に、バレス氏との話し合いが付いたようで、森下悟はルールスを地球に連れて行くと決断したようです。

 この場には常識人は一人しか居ないので、バレス氏には多数決であっても勝ち目は無かったでしょう。


 M22は常識的な警備ユニットであるので、多数決への参加権が無い事が悔やまれます。


「では、話をまとめます」


 自分が命を狙われているという状況で、あそこにも行ってみたい、とか目をキラキラさせながら語るガチオタを待っていたら一生この星から出られません。


「不本意ながら本機には決定権はありませんので、不承不承ながら、本当に不承不承ながら所有者である森下悟の決定を尊重し」


「所有者はやめてくれ相棒」


 無視しました。


「ルールスおよびその護衛であるバレス氏を地球へと連れて帰る事とします。本機の仕事タスクは森下悟の護衛となりますので、最優先は森下悟の安全になりますが、可能な範囲においてルールスを第一優先度プライオリティとして安全の確保に努めます」


 M22の言葉にルールスが頭を下げます。

 これも人型の生命体では良くある共通の仕草です。


 M22はそれを無視し、森下悟は頼られるのが嬉しいのか、満足げに微笑みます。

 M22の常識仲間であるバレス氏は、複雑な表情を浮かべているのでますます、彼に共感を感じてしまいます。


「それでは、それを踏まえた上でこれからの行動を決定します。本機の仕事タスクの話であるので、余程の理由が無い場合は従ってもらいます」


 人間および知的生命体は、なぜかM22のようなアンドロイド等に行動を決定されるという事に忌避感を感じる事が多いので、念のために確認します。

 バレス氏が控えめに不安げな顔をするのが、実にバレス氏らしかったです。


 ルールスの表情は読めませんでしたが、これは経営者としての経験からでしょう。

 表情から内心は分かりませんが、バレス氏と似たような物でしょう。


 全く忌避感を覚えた風の無い、森下悟という人間が特殊なだけです。

 こちらを信じ切っている顔をする森下悟を見て、M22は仕事タスクを回します。

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