第13話 複雑な解決方法から検討するは、愚か者の証拠です7


 久しく沈黙していた護衛のバレスがせ、ルールスがあらあらと微笑みました。


「私、求婚されてます?」


「ロンドロス星ではそういう意味になるのですか?」


 森下悟が驚く。

 流石に自分の星に来ませんか?というのが求婚の言葉になる星はありません。


 星間国家でそんな国があったら外交上で大惨事を量産する事になります。


「冗談ですよ」


 M22は念の為に冗談だと森下悟に告げます。

 流石に護衛対象が結婚詐欺に引っ掛かるのは阻止すべきでしょう。 


「あら?今の流れは所謂いわゆるカケオチという物のお誘いではないのですか?」


「やめてください。M22の雇い主は底の抜けたお人好しで、馬鹿で、ウィキで名前を検索したら、曖昧さ回避で一緒に愚か者が表示されるような人間ですが、迂闊うかつにそんな事を言えば本当に駆け落ちする事になりますよ?」


 俺はそんなに惚れっぽくないぞ。

 森下悟からの抗議は無視しました。


「まぁ、随分と情熱的な人なのですね。地球の男性とは皆そうなのですか?」


「有機生命体のオスなんて基本的にはバラ撒くのが仕事なので、地球人に限らないとは思いますが」


 一体何の話をしているのだと、森下悟とバレスが遠い目をします。


「そんな話は置いておくとして、私は断固反対します。既に関わりすぎです、状況を確認する為に話を聞くのは良しとしても、地球への逃亡を提案するなんて言語道断です」


「だが彼女はSFファンなんだぞ?」


 この(センシティブ判定によりマスクされました)野郎。

 どのように考えたらSFファンだから、という理由で汎知性連合の中でも有数の、大企業のお家騒動に頭を突っ込もうという考えになるのか?


森下悟が世のことわりを告げる声で言います。


「読者は大事にしないと」


 M22の生体脳に謎のスパークが走ります。あらゆる経路バイパスをノックしまくり、M22の内臓武器へとアクセスしようとします。

 M22は全ての命令をキルしてから、溜息を吐きます。


「貴方の職業倫理が常軌を逸しているのを、今更責めよう等とは思いませんが冷静になってください」


 M22は出来るだけ冷静な声を作ります。


「仮に彼女を地球に連れて行ったとして、どうなると思うのですか?」


「どうにかなるだろ?」


「なるわけないでしょ」


 3ナノ秒ほど言葉を失う貴重な体験をしてから、断言します。


「別に時間制限のあるような宗教的儀式でもないんですよ? 追われるのが、みんなおいでよエルダスパーク星になるか、地球になるかの違いだけです」


 そこまで言ってからM22は、M22のニューラルネットワークが間抜けである事を認めました。あまりにも間抜けです。


「どうした?」


 黙ったM22に森下悟が声をかけてきます。

 それを手で制してからM22はルールスと護衛のバレスの方を見ます。


「追われているんじゃなくて、命を狙われていますね?」


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