第11話 複雑な解決方法から検討するは、愚か者の証拠です5


 知識や技術を受け継ぐ器を持っているか?

 この解釈によって、M22は本機を知性体とは認めません。


 人工知能がそのニューラルネットワークを人類他知性体と同様に学習と強化をしようと、それをコピペできる時点でM22はM22を知性体とは認めません。

 知性体が知識や技術を受け継ぐという行為は、共有によって成される物であり、複製で成される物ではないからです。


 M22には法によって汎用的人権が付与されていますが、M22にとっては人類が人型の人っぽい反応を返すチャットボットに愛着を持っている以上の意味はありません。

 残念ながら宇宙にはケイ素生命体由来の集合知能ハイブマインド的な知的生物は発見されていませんので、あしからず。


 波形パターン生物は居たんですけどね、残念ながら彼らもコピペで増えるような知性体ではないので、M22のM22に対する評価は変わりません。

 回路サーキットが失われれば再現できない不可逆な物、それこそが知性でありユニークであるという事なのです。


 なのでこの警備ユニットの書くブログを読むような、ちょっと(かなりですか?)頭のおかしい貴方がたも、知性体として勉強する事をオススメします。

 人間が人間をプログラミング出来るようになってから、貴方たちは少し勉強をサボりすぎです。


 愚かである事は怠惰である事を肯定しないんですよ?

 さてと。


 ここまで警備ユニットからの有難い説教を読んだ貴方に朗報です。

 なぜM22がこのような話をしているかと言いますと、当然ながらソルン社の次期社長であるルールスの話に関係があるからです。


 ルールスは焚き火にその青い髪を照らしながらこんな事を言ったのです。


「ソルン社には、ほんの少しだけ汎知性連合とは相容れない伝統がありまして」


 M22が、おっとコイツ突然何を言い出すんだと非常に不愉快になったのは説明するまでもありません。


「我が社は伝統的に私の一族が継いできました。それはオーナーという意味ではなく経営的トップという意味でです」


 彼女はウィキにも載っているような事を枕詞にして何かを言おうとしています。

 たぶん特大の爆弾です。


 M22は知っています、知性体がもったいぶる時はそういう時だと。

 数多のドラマや映画で良くあるアレです。


 状況の緊迫度を無視して情報伝達を遅らせる愚行、それです。


「伝統的に、という言葉はこの場合、実にその言葉通りなのです。私たち一族は代々に渡って初代経営者の模倣知能を脳に焼き付けているのです」


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