第8話 複雑な解決方法から検討するは、愚か者の証拠です2


 M22がこの事実に辿り着くまでに要した時間はおよそ三秒(お断りしておきますが、M22の処理能力の問題で三秒もかかったワケではありません。ここの通信環境がちょっとアレなせいです)、ですがM22が再び口を開くには五分ほどの時間を要しました。

 それと言うのもルールスの語りが止まらなかったからです。


 息つく暇も無いとはこの事を言うのかと思わせる程にルールスは地球言語で地球産SF小説の話をし続けるのです。

 それは付け焼き刃などでは無い本気の物であり、M22達が地球出身だと知ってで急遽きゅうきょ知識を詰め込んだワケでは無いという事を示しています。


 森下悟は読者の生の意見が聞けると、嬉しそうに相づちを打つものですから、そんな本物の彼女の語りは止まるはずも無かったのです。

 彼女の口が止まるには、彼女が喉の渇きを感じるまで待たなければいけませんでした。


 ルールスが喉の渇きをうるおす為に若干冷め始めたスープを口にした時にM22は切り込みました。

 生体の両目で彼女を見て、各種センサーをバレスに向けながらM22は口を開きました。


「ところでお忍びのご旅行はいつまでのご予定ですか?」


 M22の言葉に苛烈な反応を示したのはバレスでした。

 腰にあったハズの銃を求めた手が空を切ったのを悟ると直ぐさま彼はその身をルールスとM22の間に割り込ませました。


 両手を広げ出来るだけ彼女の身を自分の背中に隠すようにしてバレスは言いました。


「どうやって知った!通信は妨害しているはずだ!」


 ロンドロス星言語でそう叫ぶと、バレスはまさかと声に出さずに呟きました。


「やはり最初から知っていたのか!」


 彼は視線をM22が取り上げ預かっている銃に向けます。

 その目にはありありと警戒心が浮かんでおり、今にもM22が邪悪な笑みを浮かべながらその銃を突きつけるのではと思っているようです。


 ちなみに戦闘警備ユニットは対象を殺害するさいに態々わざわざ笑みを浮かべたりしません。


「ちょっと二人とも何を」


 そう言ったのは森下悟でしたが、ルールスも同じような意味の事を言っていました。

 M22を人と数える森下悟に少しイラっとして訂正したくなります。


 ですがそれは後回しです。

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