第7話 複雑な解決方法から検討するは、愚か者の証拠です1

 状況を整理しましょうか。

 青い髪のロンドロス星出身の二人は、一人は護衛でその護衛対象は姫様と呼ばれる女性である。


 ちなみにロンドロス星には貴族制度も王族も存在しません。

 M22が使用しているグーグル翻訳が誤訳をしていないのであればバレス氏は護衛対象を姫様と呼ぶことを好む特異な人である可能性が出てきます。


 まぁそうであったとしても些末な事ですが。

 話を戻しましょう。


 その二人は何故か口に手を突っ込んだわけでもないのに(その点については疑問の余地はありません、そんな知性体がこの広い宇宙で、一か所に集中するような奇跡的な確率をM22は信じません)パナナルナノスの群れに追われ、危機を脱したにもかかわらずホテルに帰らずかといって救助を要請すらせずに谷底に逃げるように隠れている。

 そして女性は情報遮断フィールドを身につけている。


 この文章がブログに掲載される頃には全てが事後であると分かっていてもM22は尋ねずにいられません。

 二人がトラブルの種にしか思えないのはM22だけでしょうか? と。


 M22は束の間(生体脳しかない読者の方々にとっては瞬きより刹那です)現実から逃避したくなります。

 出来れば森下悟を無言で気絶させてホテルまで帰ってベッドに放り込み、その後にシャワーを浴びてソファの上で朝までネットフリックスでアニメを見ながらどこかのSNSで何の役にも立たない呟きをしてすごしたい。


 ですがそれはかないそうにありません。

 森下悟は自己紹介が済んだことに満足したのか、フィリップ・K・ディックがどうとかルールスと話していますし、青い髪の男バレス氏は油断ならない目でM22を凝視しています。


 悲しいかな、この場で文明的な寝具で夜を明かしたいと考えるのはM22だけのようです。

 M22は焚き火に視線を落として意識をネットワークへと向けます。


 二人の事を調べるつもりでした。

 分からなければ多少の違法行為をしようとも。


 ですが幸いな事に二人の情報はすぐに見つかりました。ただしその内容はM22にとっては嬉しくないものでした。

 皆さんはソルンという会社をご存じでしょうか?


 勿論ご存じないでしょうが恐らく皆様はこの会社の製品を使っていると思われます。

 というよりもこのブログを読めている時点で間違いなく使っているでしょう。


 ロンドロス星に本社を持つこのソルンという会社の主な製品は、超光速通信機器です。正確に言うならばその主要部品ですが、全宇宙でシェア70%という凄まじい数字を叩き出しています。

 つまりはM22がブログをアップロードする時、あなた方がそのブログを読む時、どこかでほぼ必ずソルン社製の製品を使っているだろうと思われます。


 当然ながらその売り上げは莫大な物で、ソルン社はその莫大な利益を元に更に莫大な利益を稼いでいます。

 さてここでちょっと皆様に思い出して頂きたいのですが、M22はあの二人の事を調べようとしました、それなのに何故ソルン社の事を説明しだしたと思いますか?


 答えは簡単です。

 ソルン社の次期社長行方不明。


 これがルールスの画像データと共に付けられていたキャプションです。

 ね? 簡単でしょ?


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