第26話 一番弟子老師助けに現れた

「老師、やりました。ついにリベンジしました!腕もぎ取ったぞー!」

と小甘は飛び跳ねて喜んでいる。

関節から煙が出ただけあって機械としてのダメージは大きいらしくアンドロイドはひざまづいている。

「バカヤロー、自業自得だ。人の腕をちぎったりするからてめえも腕をもがれるんだよ」

そう言いながら小甘はアンドロイドを蹴り倒した。

うつ伏せに倒れ小甘に横腹を蹴り続けらるアンドロイド。

「痙攣しはじめたぞ、気をつけろ小甘」

と私が声をかけた時、アンドロイドは一本の棒のようにどこの関節も曲げずにビヨーンと起きあがった。

映画『片腕ドラゴン』のパロディのようだが状況が状況なだけに私も小甘も笑うに笑えない。

そしてまた猛スピードで小甘に近づき両肩を持ち頭突きを食らわせた。

戦った相手の技をどんどんアップデートしていく精密機械には勝ち目はないのではないかと言う絶望感がよぎる。

小甘の頭からは血が流れ続け意識が遠のいていくようだ。


私も満身創痍で小甘を助けに行くことができない。

小甘がやられ、次に私がやられ、今、陸軍国家司令本部武術館の館長であるにもかかわらず陰から様子を震えながら見ている張飛羽がやられるのだろうと殺戮の順番を予想した。

暴走したアンドロイドを抹殺したいのなら小甘と共に戦えばいいじゃないかと思うがそれすらやらない。

誰が助けてくれるわけでもないのに、みすみす自分もアンドロイドの餌食になる事がわからないのかと呆れる。

何発も頭突きを喰らいがっくりと首をうなだれた小甘。

その時、武館の扉を開け一人の青年が入ってきた。

その青年は武館で繰り広げられている地獄絵図を見て息を飲んだ。

そして

「李老師!」

と大声で叫んだ。

アンドロイドは頭突きをやめ、めんどくさそうにそちらに視線を移した。


その青年は私の厳しい稽古に耐え切れず武館を後にした小朱であった。

「老師、黙っていなくなってすみませんでした」

と深々と頭を下げた。

「何か老師の身に危険が迫っている胸騒ぎがしたので叱られるのを覚悟で来ました」

「何も叱りはせんよ。弟子入り再審査じゃ。こいつを倒せ」

と私は息も絶え絶えにアンドロイドを指さした。

小朱は

「わかりました」

と言うやいなやアンドロイドの背後を取って倒して頸動脈辺りを絞めた。

私と初めて手合わせした時、自分がかけられたそのままの技を小朱は使った。

天賦の才能である。

しかしながらアンドロイドに頸動脈はない。

「アンドロイドに絞め技は効かん。武器を持て!」

「使い方がわかりません、老師」

「そうじゃった。まだ武器の扱いは教えてなかったの。とりあえず棍を持って振り回せ!」

「はい」

と小朱は棍を手に取った。

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