第25話 執念で腕をもぎ取る門下生

耐久性の強さを認識したのかアンドロイドは背中への攻撃をやめて頭部へ鉄槌を打ち下ろし始めた。

後頭部を守っている手が痺れて来て、両手を床に付いた時、アンドロイドの力が抜けた。小甘がアンドロイドの首を蹴り倒した。

仰向けに倒れたアンドロイドは膝を曲げ十分タメを作っておいてから飛び跳ねおきた。

人間のように蹴られた首を倒したり回したりしている。

「李老師!大丈夫ですか?」

と小甘が私の肩を抱く。

「油断大敵じゃな。うぅっ」

手の痺れが収まらず、拳を握る事さえままならない。

「老師、私が戦います」

「老いぼれからバトンタッチじゃ。油断をするな」

「はい。任せて下さい、老師」

小甘は意気揚々と立ち上がる。

近寄る時にゆっくり追い込み威圧感を出すようにプログラムされたアンドロイドが一気に間を詰めて小甘に襲いかかった。


面食らった小甘は隙を見せてしまいアンドロイドに内ももを掴まれた。

そして首を横に倒され内ももを持ち上げられた。

その勢いでアンドロイドは高く高く小甘を頭上に掲げた。

このまま床に叩きつけられてはたまらないと思った小甘はアンドロイドの頭上でジタバタしている。

しかしその抵抗も虚しく小甘は強烈に床に叩きつけられた。

むうん…と声にならない声を上げて仰向けで横たわる小甘。

アンドロイドは放おってはおかない。

馬乗りになり、小甘の顔面にパンチの雨を降らせる。

二三発はもらったが、しっかり顔面をガードした。

片手ずつ交互に殴っていたアンドロイドだが、面倒くさくなったのか両手で小甘の両耳をめがけてフックを放とうとした。

万事休す、これで終わったと思った私は目をつぶってしまった。

目を開けると小甘は両手でフックを受け止め掴んでいた。

そしてそのまま上体を持ち上げ頭突きをアンドロイドの顎に食らわせた。

下顎が上顎に食い込んだ。


これで上顎の近くにある平衡感覚器が破壊されふらつくだろうと私は思った。

案の定、奴はヨロヨロだ。

「チャンスじゃ小甘、無防備な奴の腕を取って後ろに回り込んでひねり上げろ!」

「わかりました」

と小甘は持ち前の打たれ強さを発揮して立ち上がった。

アンドロイドの右手を自分の左手でつかみ背後を取った。

アンドロイドは前かがみになった。

頭でアンドロイドの首肩甲骨の間を押さえながらどんどん捻り上げていく。

両腕があれば右手で敵の左肩を押さえる事ができるのだが片腕ゆえにやりにくそうだ。

しかし小甘の格闘センスは天下無双である。

顎と頭を絶妙に動かしながらアンドロイドの動きを制している。

後ろに回したアンドロイドの手がどんどん上がっていく。

人間で言えば肩甲骨上腕関節と思われる箇所から煙が出した。

「もう少しじゃ」

と声をかけたがもう必死で何も答えない小甘。

小甘は死にものぐるいで雄叫びを上げアンドロイドの右腕をもぎ取った。 

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