第23話 張館長アンドロイドの始末依頼

「被害にあった住人の衣服はミリタリーファッションで戦闘アンドロイドは敵と誤認して殺害したのであろうと専門家は分析しています」

とニュースは続いた。

迷彩柄の衣服を着用しているだけで、誰彼かまわず襲いかかるよう誤作動を起こしてしまったと専門家の分析は続く。

「国家が作ったアンドロイドが国家に牙をむく…皮肉なものじゃ」

「自業自得です。殺戮兵器で自分の首を締めてしまったんですね。そんな物を作るから天罰が下るんです」

「天は罰を与えんよ。自分の行いの合わせ鏡じゃ」

「そうですか…ついつい私は片腕にされてしまったので感情が高ぶって天罰だなんて言ってしまいました」

と小甘がうなだれた時、電話が鳴った。

「もしもし、李です」

「李老師ご無沙汰しております、陸軍国家司令本部武術館の張飛羽です。お元気ですか?」

「元気じゃが何か用か?国家司令本部のお偉いさんが場末のちっぽけな武館主に話す事なんぞあるのかえ?」


「つれないですな、老師。未来ある若き武術家を一緒に育てた仲じゃないですか。もう少し優しくして下さいよ」

「仲良くしたらあんたはつけあがるからのう」

「ハッハッハ、老師の歯に衣を着せない物言いは気持ちが良いですね」

「社交辞令だけならもう切るぞ」

「お待ち下さい、老師、単刀直入に申し上げます」

と張館長は慌てて声を張り上げた。

「マスコミに流れているのでご存知でしょうが暴走した人工知能搭載人間型戦闘アンドロイドを老師の手で始末してほしいのです」

おいでなすった…と私は思った。

「断わる」

と私は即答した。

「そこをなんとか」

とだけ聞いて私は電話を切った。

断わると言ったにもかかわらず翌日、張陸軍国家司令本部武術館⾧は武館にやって来た。

「電話だけでお願いしようとしたのが失礼でした。なにとぞアンドロイドの始末をよろしくお願い致します。これは心ばかりですがどうぞお納め下さい」


「なんじゃこれは?」

「老師の武館は経営難とお伺いしています。経営の足しにでもと現金を持参いたしました。50万香港ドルあります」

「お引き取り願おう。金で何でも片付けようとする考え方が気に入らん。落ちぶれ果ててもわしは武術家じゃ。金で魂を売る生き方はしとらん。馬鹿にするのもええかげんにせえ」

「まだ足りませんか?100万香港ドルではいかがでしょう。武館の建て直しをしてもお釣りが出ますよ。かなり老朽化しているようですからね」

「とっとと帰れ!この馬鹿者が!」

と私は応接室の木製テーブルを叩き割った。

やり過ぎたと思ったが張館長は押し黙った。

「もう、言う事はないじゃろ館長」

「李老師、私も上司に睨まれているんです」

と弱気になる張館長。

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