第19話 これ以上締め続けたら腕抜ける

これだけ精巧に作られたアンドロイドだからほぼ人間の臓器や神経の回路、配置がなされているのだろうと読んだ甘二等兵は痛覚が伝わる所を攻め続けている。

膝を逆方向に折ろうと斧刃脚を叩き込む。

”みしっ“という音が聞こえたが、アンドロイドの引きは速かった。

膝は少し後ろにくの字に曲がっただけで格闘するにはなんの不自由もない程度のダメージであった。

アンドロイドが甘二等兵の右縦拳を外側から掴み裏拳を顔面に放った。

まともに渾身の打撃を喰らいよろめく甘二等兵。

なんとこの技は程三等兵が最初の試合の時に出した技をそのままコピーしている。

という事は戦えば戦うほど技のインストールが進み戦闘スタイルが無限大に広がっていくと言う事だ。

よろけた甘二等兵の後ろに回り込み羽交い締めにした。

甘二等兵の首がどんどん前にへし折られていく。

羽交い締めされているが手は自由である。

甘二等兵は四本指を突き立てアンドロイドの目を潰した。


人工知能搭載人間型アンドロイドは人間の真似をする。

目を潰されたら手で覆う動作をした。

目潰しは一般市民の武術の試合では反則で危険な禁止技だが陸軍の戦闘基準ではスタンダードである。

命の危険を感じた甘二等兵は命がけで反撃した。

しかし、一瞬ひるんだだけでアンドロイドは復活した。

戦闘意欲満々で甘二等兵への間合いを詰めて行く。

先手必勝と甘二等兵は右フックを繰り出した。

それを左手で受けたアンドロイドは手首と肘を極め自分の斜め後ろに受け流す。

甘二等兵は極められたまま前のめりになる。

アンドロイドがその手を乗り越え両足で挟み込んだ。

甘二等兵の腕を内腿でロックしながら自分の胸前に寄せて捻り上げ始めた。

思わずタップする甘二等兵。

しかしアンドロイドは関節技を緩めない。

「張館長!これ以上は危険じゃ。アンドロイドに技をやめさせろ!」

と私は叫んだ。

館長はニヤニヤ笑いコンピューターウオッチに口を寄せようともしない。

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