第17話 金属の塊叩き痛手受く
「それではアンドロイド対兵士連合チームの反則規定無しの総当り戦を行う。まずは程道元三等兵前へ出なさい」
「はい」
機械と試合か…なんとまあ世の中変わったもんだと私は思った。
まだアンドロイドは微動だにしない。
館長がなにやら腕のコンピューターウォッチに語りかけた。
不気味にアンドロイドの目が光った。
私は九龍の貧民窟で強盗殺人をする恐ろしい凶悪犯を見てきたが、こんな危ない目は見たことがない。
殺人などはなんとも思わないようにプログラムされているのだから凶悪な目になるのは当たり前だろうと思った。
目が光った後は、つま先が上がりおもむろに擂台に近寄っていく。
決して早い動きではない。
こんなに遅ければスピードで勝負すれば勝てなくとも負ける事はないだろうと第一試合を見守ることにした。
軍隊は嫌いだが一生懸命に稽古する若い兵士は好きだ。
後ろに下がるな背後に回り込めと心で念じた。
程三等兵は自信満々に擂台に上がった。
お互いに抱拳礼を交わす。
アンドロイドにも礼儀はあるのかと意外に思った。
程三等兵は螳螂拳よりどちらかと言うと酔拳が得意である。
足をフラフラさせながら酔っているかの如くアンドロイドとの間を詰めて行く。
アンドロイドは酔螳螂掌の型が人工知能にインプットされているので“これは酔っていないフェイントだ”とはっきり認識しているようだ。
センサーで敵の動きを察知していると見えていろんな角度で背後を取られないように程三等兵と対峙する。
アンドロイドが先に手を出した。
素早く間合いを詰めて顔面への右縦拳を放った。
程三等兵は体をアンドロイドの外側に捌き右手で手首を捉え左手で顔面を打った。
酔拳の横笛を吹く酒仙、韓湘子の動きである。
いかんせん人工皮膚を貼り付けた金属の塊である。
かなり痛かったのだと見えて左手を押さえて後退する程三等兵。
今度は拳を使わず手刀で機械のジョイント部分であろうと思われる関節に集中攻撃を続ける。
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