第16話 幕開ける何でもありの組試合
「甘二等兵、今日はやけに饒舌じゃないか、いつもはしょんぼりしているのに。上司に対する反論は規則で禁止されている。どうなるかわかっているか?」
「はい、減給と独房での謹慎処分です」
「承知の上での反論だな」
「そうです。これは国家の存亡そして人類の未来に関わる事ですからたとえ罰を受けようが私は主張します」
「大した勇気だ。そこまで私に食らいついてきた者はいない。その大胆さを認めて減給も独房での謹慎処分も免除しよう」
「別に私はそんな事を望んでおりません」
「まあいい。李老師のお顔も立てて今日はこれぐらいにしておこう。アンドロイド開発の件は保留にしておく。李老師、今日のところはとりあえずお引き取り願います」
張館長は自分の部屋の扉を開けて私と甘君の退室を促した。
「老師、館長はアンドロイド開発をあきらめますかね?」
「どうじゃろうな…わしにはわからん。人生、自分の思いが相手に伝わらん事もままあるもんじゃよ」
「本日は人工知能搭載戦闘型アンドロイドのお披露目を兼ねてなんでもありの試合を行う」
館長は自信満々に兵士達の前で言う。
やはり館長は言う事を聞いていなかった。
アンドロイドを完成させてしまった。
アンドロイドと思われるベールをかぶった物体が台車で運ばれてきた。
「それでは副館長ベールを外してくれ」
「承知しました」
副館長の手でベールが外された。
「館長、私の忠告を無視してくれましたな」
「なんの事ですか?」
「認知症でも患われたかのう。つい先日のアンドロイド開発中止の忠告じゃ」
「私は未来しか考えないものですから」
「そういうのを反省のない人間と言うんじゃ」
「反省なんかしていたら未来に進めませんよ、老師」
「こんな物騒なものを作るなんて、あんたに未来はないわい」
人間の形をした不気味な魂のこもっていないような物体は遠くから見ると人間に見えるが近くに寄って触ってみると人工筋肉の下にある金属の冷たさが感じられる。
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