第14話 阻止しようアンドロイドの開発を

「李老師にお疲れ様と言ってもらえて光栄です」

「わしゃ大した人間じゃないぞ、そんなにたいそうに言わんでええ」

「全香港擂台賽で何度も優勝しているのは老師だけです。本当に尊敬しています」

「尻がこそばいのう。今はただの老いぼれじゃ」

「老いぼれだなんてご謙遜です。老師の技はとても76歳には思えません」

「もうそれぐらいで勘弁してくれ。わしゃ帰るところじゃったのに」

「それはお引き止めして申し訳ございません。ただ少し聞いて頂きたい事がありまして」

「なんじゃ聞くくらいは聞くぞ」

「はい、単刀直入に言います。私は今度のアンドロイド開発には反対しています。老師の技を学ぶなら別にアンドロイドを作らなくても動画も取らせていただけます。そして何より手取り足取り丁寧に教えていただいてますのでここにちゃんとしまってあります」

と甘王粛は手のひらを胸に当てた。

「わしもその事は言ったんじゃがのう。聞く耳をもってないようじゃ」


「老師も反対意見を館長に伝えたのですね。何よりも私は暴走して人間を襲いはしないかと危惧しているのです」

「放っておけ。アンドロイドの暴走を制御する機能も開発中らしいからの」

「人工知能が何でも人間の仕事をしてしまったら人類の未来は悲惨な物になると思うのです」

「甘君は若いのによく考えいるのう。そこまで考えているのにどうして職業軍人などをやっておるんじゃ?」

「中国武術の真髄を追求したいからです。巷の格闘家や武術家は名誉や私利私欲に走り武術をビジネス化しています。李老師だけは純粋に伝統武術を後世に伝えようとしていると信じています。その李老師が陸軍で武術指導していると言う情報を得て入隊したのです。老師が指導をお辞めになる時が私が除隊する時です」

「そうじゃったか。伝統武術をそこまで大切にしておるんじゃな」

「今一度、館長に二人して直訴しませんか?」

「君の熱い気持ちに応えよう」

「ありがとうございます」

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