第13話 開発中アンドロイドは自己満足
「人間はいつか死にます。しかしアンドロイドは未来永劫、存在できます。しかも洗練された金属の流線型は観る者をうっとりさせます」
「何が言いたいのかわしにはさっぱりわからんわい」
「わからなくても構いません。これは私のライフワークでもあるので誰がなんと言おうと開発を続けます。それでは動画をスタートします」
スクリーンが降りてきて映像が映し出される。
キーカシャ、キーカシャという音がスピーカーから聞こえる。
アンドロイドが酔拳螳螂掌の最初の構えをしてみせた。
なるほどそれなりに私の動きを真似してある。
機械にしては滑らかな動きだ。
下半身がしっかりしていて胸板はそれほど厚くない。
パンチを出すための前鋸筋が丁寧に作られている。
套路が終わった。
「足を組む坐盤式から横蹴りに入る動作には苦労しました」
と張館長はドヤ顔をして言った。
「人間に近い動きをよく機械にしては搭載できたな。そこは評価しよう」
とさらりと私は答えた。
「しかしじゃ。本来武術の套路は人間がやってこそ美しいんじゃよ。それをわざわざ、機械にやらせることもないじゃろ?そうは思わんか館長」
「ごもっともです。私の自己満足でしかないかもしれません」
「それなら直ちに開発をやめるべきじゃ。とんでもない事にならんうちにな」
「先ほども申し上げましたが、もしアンドロイドが暴走しても我々はそれを制御する装置も同時に開発しています。なにとぞご安心ください、老師」
「まあ、わしには責任はないんでな。ただ万一のことを考えて老婆心を起こしただけじゃ」
「そう言っていただけると我々も心置きなく開発に精がでます」
「肯定じゃなくて、是認じゃからな」
「承知いたしました」
どこまで張館長が私の言葉を理解しているかはわからない。
私は道場を後にしようとした。
その時一人の兵士が私に声をかけてきた。
「李老師、本日はありがとうございました。陸軍二等兵、甘王粛です」
「おお甘君か。稽古お疲れ様じゃった」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます