第12話 武術家をアンドロイドが超えていく?
若い兵士達を指導しているとどうしても小朱の事を思い出してしまう。
もう自分から去っていった者を追うのは止めようとすればするほど小朱の天真爛漫で屈託のない笑顔が浮かんでくる。
この套路はどう使うかと言う説明をする時、兵士達は目を輝かせて私の言う事に大きくうなづく。
それはそうだろう、何回も同じ套路をやらされたら飽きないほうがおかしい。
張館長は決まってビデオカメラで撮影している。
「館長、ビデオ撮影は構わないがインターネットに流すのだけは止めてもらいたい」
「当たり前じゃないですか。国家の宝だと称されている老師の技を巷に拡散するなど言語道断です」
「わかっているならええんじゃが」
「老師の技は動画で見ても真似なんかできやしませんよ」
「当たり前じゃ。兵士達の教材用にしか使わんといてくれ」
「わかっております。どうぞご安心下さい」
なんとなくこの館長は信用ができないとずっと思っている。
最初に会ってからずっとだ。
「陸軍が開発中の中国武術の套路を演武するアンドロイドの動画をお持ちしました」
とある日の稽古で張館長が私に言った。
やりよったかと私は思った。
「老師が表演なさる型をビデオカメラに収めてその通りに兵士に演武させ、それをモーションキャプチャでコンピューターに入力してからアンドロイドに搭載しました。このアンドロイドの動きを教材にさせていただきたく存じます。そうすれば縁起でもない話ですが老師が他界されても我軍に伝統武術が失伝しません」
「本当に縁起でもないのう」
「失礼しました。老師はまだまだ元気でいらっしゃるのに」
「わしの事ではない。そんな物を作って人に襲いかかったらどうするんだと言う話じゃ」
「いえいえ、ご心配なく。わが陸軍の開発研究部はそんなヘマはいたしません」
「機械のする事じゃぞ。本当に大丈夫か?」
「安全管理には120%の自信があります」
「そんなものわしが弟子の前で手本を見せて脈々と繋いていけばいいじゃろ」
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