第26話 雪の結晶が降る夜3

「やっと見つけた。リリッシェ」


 ここだけ、雪の結晶が降っていたんだよ。と、ライファンはまぶしそうに夜空を見上げる。


「雪の妖精さまの奇跡の夜かな」


 頭の中が真っ白になる。リリッシェは向きを変えて駆け出した。


「ほら、逃げない」


 ライファンが肩をつかんで止める。


「それから、夜に一人で出歩かない」


「な、な、なんで?」

 リリッシェは転んで、雪に埋まった。


「お前、宮廷聖女辞めるって?」


 ライファンはリリッシェの腕を引いて起こす。服の雪を払ってくれた。


「急にそんな話聞かされてさ。苦しかったよ」


 ライファンは今まで見たことがないくらい、悲しげな目をしていた。


「リリッシェに逢えなくなることが苦しかった。ずっといいたかったことがあるんだ。いっていいか?」


 さっきの予知が頭に浮かぶ。


 リリッシェの鼓動がどんどん早くなり、動けなくなった。


「好きだよ、リリッシェ。俺と婚約して欲しい」


 リリッシェは返事ができない。

 ライファンは目を伏せた。


「やっぱり断るんだよな」

「え?」


 いいんだよと、リリッシェの頭を撫でた。

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