第25話 雪の結晶が降る夜2

 リリッシェは涙を拭った。


 また少し期待してしまい、情けなくなった。どうしていつまでも諦められないのだろう。


 よく考えたら、今夜は舞踏会だ。ライファンはお城でまた出逢いがあるだろう。キエス公爵令嬢も出席だろう。


 それとも、また妄想かな。

 予知は未来の間でないとできない。できるのは、妖精の奇跡が起きたときだ。


 ……違うよね。きっと本当の予知だ。


 だってライファンは今は舞踏会に出ている。わたしの得にならない予知は、妄想じゃない。


 そっか。

 ライファンはきっと、舞踏会で本当の恋をするんだ。


 涙があふれる。


 いやだよ。

 苦しいよ、ライファン。


 ……。


 リリッシェは顔をあげる。


 青い青い雪明かりの中に、ふいに人影が現れたからだ。


 人影の長い髪が風に揺れる。雪と同じくらいに美しかった。


 目を凝らしたリリッシェの息は止まりそうになる。


「ライファン……」


 そこにはライファンが立っていた。


 彼の冴えわたるような美貌は、儚げな雪によく映える。

 リリッシェはつい見惚れた。


 時が止まってしまったような雪景色の中で、雪の王子はリリッシェをずっと見つめていた。

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