第9話 雪の王子の招待状1

 リリッシェはお城の南の回廊を歩いていた。


 回廊は外が見渡せるように造られている。


 一面の雪原を見るためだ。光を反射する雪がまぶしくて、リリッシェは目を細める。


 さっきまでリリッシェはお茶会に呼ばれていた。婚約の予知以来、いろいろな集まりに招待される。


 最近、リリッシェは雪の聖女と呼ばれるようになっていた。ライファンの婚約の他にも、大臣の事故を予知した。それで大臣は命を救われた。


「よお、雪の聖女さま」


 ふいに、からかうような声が降ってきた。


 振り返ると少年が立っている。


 お城のとなりの真判殿しんぱんでんで働く、裁判官のブルーナだった。互いに城に出入りするうちに顔見知りになったのだ。


 彼はいつもリリッシェをからかう。


 しかも、かなり嬉しそうにだ。

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