第6話 雪の王子の困りごと3

「素敵な恋だよね。うらやましいよ」


 ライファンは一瞬、リリッシェを見つめたあと、目を伏せる。


 そんな幸運なんてあるはずないと、小さくつぶやいた。


「どうしたの? ライファン」


「王子だからって、いい恋なんてできないの。もう何度も思い知ったよ。そのうち予知を利用されて、どこぞの姫と政略結婚させられるのかオチだ。ああ、寒気がする」


「うちの国で政略結婚した人なんていないじゃない」

「もう、縁談がいくつも来てるよ。寒いよ」


「……みんなはね、きっとキエス公爵の令嬢だっていってるよ。純真できれいだもんね」

「想像できないな」


「そういえば、令嬢とは昔からの知り合いだよね」


「昔からっていうんなら、お前だって……、いや、今はその話はやめておく」


 めずらしく、ライファンは言葉をつまらせた。リリッシェから目をそらして、窓の外を眺める。


「わたしたちが知り合いなのは当たり前でしょ。親が友人同士なんだから」


 リリッシェはわらってしまった。


「もう、この話はやめよう」


 ライファンは疲れたように目を閉じる。


 そのとき、ドアがノックされた。ドアから、十数人の婦人たちが顔を出した。


「許可なき訪問、失礼しますよ。ライファン」


 一番前にいた婦人が微笑む。

 ライファンを弟のように可愛がっていた女性だ。

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