第3話 聖女の予知3

 リリッシェの予知はほとんど外れたことがない。


 その功績を買われ、リリッシェは宮廷聖女になっていた。


 三日前の、星空が見えるのに雪が降る夜のことだった。


 雪が美し過ぎて、なにかふしぎな力を感じて、リリッシェは誘われるように未来の間に入った。


 雪の妖精の奇跡を受けたような気がした。

 そして、王子の婚約を予知したのだ。


 王子の顔が目の奥に浮かぶ。


 一瞬、リリッシェの足は止まった。


 だいじょうぶ。

 自分にいい聞かせる。

 

 ライファン王子は予知を今日こそ喜んでくれる。


 ……今度こそっ!


 祈るように、リリッシェは雪道を駆け出した。


 風が吹いて、また粉雪が舞う。空に登った雪は雲のように流れていた。波状雲に似ている。


 青空にさざ波をつくっていた。


 これも妖精がつくる奇跡だ。

 リリッシェの国でしか見られない雪だった。


 森のほうを見ると、誰も足を踏み入れていない雪原に、落書きがしてある。飛び跳ねている雪うさぎの絵だ。


 あれも雪の妖精の奇跡だ。……と、いうよりいたずらだ。


 リリッシェは道の脇に、『ありがとう』という文字を書いた。

 運が良ければ、妖精が読んでくれるのだ。


 感謝を込めて頭を下げ、リリッシェはまた道を駆け出した。

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