第72話 ドラゴンについて調査するぞ配信
シュンカトウ共和国のシガラキ代表に、シェフ型ゴーレムのジュールを納品した私。
成果報酬としてシガラキ代表から、私は2000万を受け取った。勿論、そんな大金を一気に渡せないから、小切手形式で貰ったのだけれども。
お金も嬉しいのだが、それよりも、もっと嬉しい事。
それは、ドラゴン生育術!
「あぁ、素晴らしい! 素晴らしい! 素晴らしいぞ、これは!」
ドラゴンが飼育されているきゅう舎にて、私はドラゴンの飼育担当さんから色々と聞いておいた。
ドラゴンにとっての適温湿度などの環境、好きな食べ物、飼育するために必要な施設など色々と教えて貰い、私としては凄く興味深い内容ばかりだ。
「マスターは、なんでそんなにドラゴンに興味津々なんですか?」
「それはアレだな、ドラゴンが未知の生育をしているからだよ」
そう言って、私はベータちゃんと共にきゅう舎を見渡す。
ドラスト商会のきゅう舎には、様々な種類のドラゴンが並んでいた。
速さに特化した"スカイドラゴン"、身体中から冷気を放つ"アイスドラゴン"、大型船のように海を渡す"オーシャンドラゴン"、山岳地帯をすいすい移動する"アースドラゴン"、その鱗の美しさから貴族の歓迎などに大活躍の"レインボードラゴン"----。
大きさ、体表の鱗、翼の有無、好きなモノなども多種多様なドラゴン達が、気ままにきゅう舎に並んでいた。
「ベータちゃん、見たまえ! この様々な種類のドラゴン達を!」
「えぇ、本当に色々といらっしゃいますね」
そう、本当に様々だ。
そしてこのドラゴン達が、全員"
あそこの鱗の美しいレインボードラゴンと、その何倍にもなりそうなアースドラゴンが、同じドラゴンから生まれた卵の家族なのは驚きである。
そしてこのドラゴン達は、全てこのきゅう舎にて生まれている。
「つまりドラゴンとは、卵の状態であればどんなドラゴンにもなる可能性を秘めている! どのドラゴンになるかのメカニズムを知る事さえ出来れば、自然界には存在しないドラゴンを作れるという事だ!」
「それは、凄い事ですね! つまりは、マスターだけのドラゴンという訳ですか!」
飼育担当係の人の話によれば、ドラゴンは生まれた後の餌で変化するのではなく、生まれた段階でなんのドラゴンになるかが決まっている。
自然界だと氷山域に生息するアイスドラゴンと、山岳地帯に生息するアースドラゴンが同じ場所で生まれた事から見ると、自然環境には左右されないようだ。
さらに、孵化させた相手も、同じなはずなのに違うドラゴンが生まれているとなると、使い手にも左右しない。
1つ1つ、私はドラゴンについて、調査をしていく。
私が持っているドラゴンの卵はたった1つなので、試していくというのが出来ないため、ここは慎重にしていく必要があったからだ。
「よし、だいたい分かった」
ドラゴン飼育担当に礼を告げると、私はそのまま家への帰路へと急ぐ。
ドラスト商会から得られた情報で、ドラゴンと言うのがどういう魔物なのか、だいたい検討がついたからだ。
今すぐ実際に試したいため、私は家路へと急いでいた。
ドラゴンが、生まれるとなにドラゴンになるのか。
そのメカニズムも、飼育担当さんが快く見せてくれた資料によって、だいたい分かりつつあった。
それは、"
とは言っても、ただの魔力ではない。
ドラゴンが欲する魔力には、条件がある。
それは、"
ただふわふわと浮かんでいる魔力をいくら吸い取った所で、ドラゴンの卵は孵化しない。
逆に、「どういうドラゴンになって欲しい」と明確なるイメージを魔力と共に与えれば、人間が持つ、自然界に比べると明らかに少量の魔力であっても、孵化できる。
その違いこそ、意思の力、イメージ力。
決め手となったのは、古代の地層から見つかったドラゴンの卵が、人間の手ですぐさま孵化できたこと。
人間という生物が介入したことにより、数千年以上孵化しなかったドラゴンが生まれて来た理由としては、それが一番理に叶っている。
恐らく一定量の魔力を込めて、なおかつ思い描かれたドラゴンの姿に変身する。
それが、私が導き出した結論であった。
「まったく、とんだ魔物だな。こいつは」
要するに、ドラゴンという魔物は、将来どんな姿になるかを親に決めさせる魔物。
人間や犬などの多くのお母さんのお腹の中で生まれる生物は、お腹の中で大きくなりながら、決められた配列に従って、人間なら人間に、犬なら犬に、その姿を整えられていく。
それは鳥が使う卵なども同じであり、卵の中で鳥になるために、配列通りに姿を整えられ、最終的には卵を割って生まれて来る。
魔物もその法則には従っており、自然発生にせよ、ウルフ型の魔物からいきなりクマ型の魔物が生まれたりはしない。必ず親に似た姿、親の性質を受け継いだ姿で生まれて来る。
一方で、このドラゴンは違う。
高品質な身体で生まれる事だけは決定しているが、それ以外はどういう姿に生まれるのかすら決まっていないので、親のイメージを参考にして生まれて来るのだ。
つまり、卵の中にドラゴンになるための必要最低限のモノはあるから、どういう姿になるかはこちらで決めて、という丸投げ種族だったのである。
魔物としての最上位種族であるドラゴンだからこそ出来る芸当だ。
まぁ、とは言え、そうと分かれば、話は早い。
「こちとら、作ることに関してはプロだぞ? 待っていろよ、まだ見ぬドラゴンちゃん! あんたに相応しい身体を、この錬金術師ススリアが作り出してやるから!」
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