第16話 タラタちゃんは刀に興味津々配信
魔術付与というのは、イメージだ。
例えば、雷を纏わせるというイメージを実現する際には、雷を発生させる魔術を付与するのが一番手っ取り早い。
だがしかし自然界における雷の発生条件と同じく、氷魔術をぶつけ合う事によっても発生できるし、なんなら非効率極まりないが風魔術や火魔術などを無理やり変換して発生させる事も出来る。
大切なのは、理屈や理論に基づいたイメージ。
それがしっかり正しければ、どんな事だって可能なのだ。
「だから、その配信もしっかりとしたイメージでやってるから、今もなお配信出来ているんでしょ?」
「はい、師匠! 実験は成功であります!」
どうやら、タラタちゃんのダンジョン内から配信を届けるというのは成功したみたいである。
うん、良かった良かった。
そのダンジョン内外を配信で繋げるというのが上手くいったなら、デルタちゃんをダンジョンに行かせるという計画が現実味を帯びてくるからね。
「コメント返しは難しいでありますが、外との誤差20秒----師匠の設定した時間以内の誤差に集まっているであります! ----って、今はそんな事よりも、その刀であります!」
自身の研究であるダンジョン内外を繋ぐ錬金術という、
----まぁ、それだけ私のこの刀が気になる、という事かな?
「ダンジョンの外から一気に6階層までワープできるように斬り飛ばす刀なんて、聞いたことがないであります! いったいどういう魔術付与をしたら、そんなのが出来るでありますか!」
「私としては、そのルーターの方が気になるけど」
「誤魔化そうとしても、無駄であります!」
誤魔化そうって言うか、本当に私はそっちの方が純粋に気になるんだけど。
私は、刀の方の理屈を知りたがるタラタちゃんを抑えつつ、ダンジョンを進んでいた。
私が作った刀を使い、ダンジョンを6階までショートカットしたのは良かったのだが、どうもタラタちゃんは納得できないみたいで----
「どうやったら! ダンジョンをワープできる魔術付与なんて出来るんでありますか!」
「なにって、転移術式の応用ですよ」
「ダンジョンは異空間でありますよ?! 転移術式なんて、通用しないに決まってるであります!」
ダンジョンは、魔王ユギーによって捻じ曲げられた異空間である。
元々の空間の何倍にも広がったダンジョン内では、位置を正しく設定して転移する転移術式は作用しないというのが今までの考え方である。
しかし、遊びを大切にする魔王ユギーは人を滅ぼしたい訳ではないので、ダンジョンボスを倒すと入口へと転移できる一方通行の魔方陣を用意してくれる。
だから、転移術式が使えない訳ではない。
単に、『位置を正しく設定して転移する』という魔法術式が使えないだけで、転移術式自体は使えるのだ。
「だから、ダンジョンをショートカットできるように調整した刀。それがこの新作の刀かな」
タラタちゃんのおかげで、ダンジョン内であろうともデルタちゃんを戦わせる目途も立ちつつある。
この刀はそんなダンジョン内で戦うのを見越して作った新作で、指定した素材があるダンジョンに素早く移動するために作った刀、という感じかな?
「まぁ、まだ
「これで……
----グォォォォンンッ!!
そんな事を2人で話し合っていると、道の奥から、オーガが現れた。
オーガとは強靭な肉体を持った、大鬼の魔物であり、強い割には食べる所も錬金術として使える所もないという、はっきり言って戦うだけ損な魔物である。
狂暴性しか持ち合わせていないオーガは、私達を見るなり、手にした棍棒を振りかざして来た。
「----よっと」
そんなオーガに、私はこの新作の刀で斬りかかる。
適当に斬っただけの私の刀は、目の前の空間を、そしてそこに居たオーガを真っ二つにする。
ダンジョンという空間を斬るのと、オーガという生物を斬るのと、この2つには何の違いもない。
「今のままだと威力が強すぎるから、ね」
オーガならこれで良いが、この威力だと魔物を回収しての素材回収なんて出来ないからね。
あまりにも威力が高すぎる失敗作、といった感じかな?
「さぁ、素材回収していくよ。タラタちゃん」
お互い錬金術師なんだから、どういう素材が有用なのかはだいたい分かっているはず。
こういう時、錬金術師同士だと「この素材はこういう風に取ると良いよ」なんて、無駄な一言を言わないで済むのはありがたい。
「おっ、このキノコとか錬金術に使えそ」
----イリュージョンマッシュルーム。
食べると幻覚作用と下痢などを起こすが、このキノコの煮汁を布などに染み込ませて専用の錬金術を施せば、荒れた地面の上だろうとも使える浮遊テントが出来る。
ダンジョン内でしか生えなくて、なおかつ食べると色々な意味でまずい効果しか広まってないから、錬金術師以外は見向きもしないんですよ、これ。
イリュージョンマッシュルーム以外にも、インクに混ぜると特殊な光を当てると光る蛍光インクにすることが出来る
量が心もとないモノも結構あるし、集めておけば他の錬金術師に売れそうなのが、ゴロゴロ落ちている。
流石は、ダンジョン。
お宝の宝庫である。
「……防御貫通……いや、それだとダンジョンの指摘階層まで飛べる理由に説明がつかないであります……」
「ほら、喋ってないで! 手を動かして!」
弟子として認める気はなかったけど、弟子扱いして欲しいんだったら、私と一緒にちゃんと素材回収をしてください。
「この先、二手に分かれて素材回収していくよ。師匠権限で私はこっち、タラタちゃんはそっちね」
「----! 師匠の命、了解であります!」
刀に夢中になっていたようだが、師匠権限を使って、向こう側の方の探索をお願いしておいた。
向こう側というのは、先程オーガが来た方向であり、私の予想が正しければオーガはあの1匹だけではないだろうし、オーガが群れていてもおかしくはない。
残念ながら私が今日試し斬り用に持って来たこの刀だけで、この刀ではいい感じに配信映えする戦いというのは難しいだろうし、折角、いままで配信できなかったダンジョン内を配信しようというのだから、いっさい配信映えできない私のよりも、あっちの方が良いだろう。
「さーて、ゴーレムの素材集め~♪ ゴーレムの素材集め~♪」
タラタちゃんと分かれた私は、ゴーレムに使う素材集めに精を出すのでした。
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