第3話 姉妹のシスター

 アナイスさんが部屋から出ると、二人が自己紹介をしてくれた。


「初めまして。私が今回、悠伍さんの担当になりました。エマと申します」

「は……初めまして。高城悠伍です」

 ダメだ。冷静になれない。

 自分で鼻息が荒くなっているのが分かる。

 鼻から出る熱風を抑えきれないでいると、今度はエマさんの隣の美女が挨拶をしてくれた。


「ボクはステラ。エマの妹なの。よろしくね!」

「は……はひぃ」

 ボクっ娘ーーー!!!

 自分の中で“ボクっ娘”は背の低い女の子のイメージだったけど、背の高いボクっ娘も良い!!

 新しい性癖の扉が開いた感じがする。


 ……ダメだダメだ。鼻の下が伸びているのが自分で分かる。

 この胸の高鳴りをどう鎮めればいいのだ。


 俺の担当になったエマさんは、サラサラのロングヘアで、きょ……きょ……巨乳だ!!(優勝!!)よくあるオーソドックスなシスターの服を着ているのに、胸のボタンがむっちりとして弾けそうだ。それにスカートなんて、シスターにあるまじき丈である。そこから見えるムチッとした太ももは、俺を誘惑しているに違いなかった。

 あの太ももに挟まれたい……なんて考えてしまうのは、男だからという理由で許してほしい。


 そして妹のステラさんは、エマさんとはタイプが正反対だ。

 スリムな高身長(俺と然程変わらないかもしれないから、百七十センチくらいありそうだ)。そして長い手足。ショートカットで赤みの強い栗色の髪は、爽やかさをアピールしていて、いかにも運動神経が良さそうな雰囲気を醸し出している。

 そしてシスターの服は、色はエマさんと同じモスグリーンだが、ツーピースのシャツとショートパンツというデザインだ。

 スラリと長い脚によく合っている。


 シスターによって服が違うのかもしれない。二人とも自分に合う服を知っているのだろう。

 俺は何を着ても大差ないけどな。


「これから、なりたい自分を目指して頑張りましょう!!」

 おっとりとした喋りながらも、力強くガッツポーズを決めるエマさん。

 頬が薄っすらとピンク色なのは元々なのだろうか。

 ぷっくりとした唇と同じ色をしている。

 か、かわいい……。

 

「でも……俺なんか……」

 こんなかわいい人の前で恥ずかしいところなんて見せたくないし、今までダイエットを頑張れたことなんてなかった。どうせ、今回も続かないだろう。


 しかし、エマさんの隣からステラさんが口を挟む。


「“俺なんか”なんて言わないでよ!! 悠伍さんは、今でも素敵なんだから。ね? エマ!!」

「そうですよ! 悠伍さんは元々かっこいいですが、これからもっとカッコ良くなって欲しいんです」


 まただ。これだって社交辞令に決まっている。


「ここの人は、社交辞令が得意なんですね」

 嫌味っぽく伝わってしまったかもしれない。

 しかし二人は平然とした様子で「まぁ、挨拶ですから」と言ってのけた。

 この施設の教育は一体どうなっているのだ……。


「ここに召喚されたってことは、心の奥で、変わりたいって強く願った人だけなんだよ。そのお手伝いをするために、ボク達シスターがいるの」

「そう……なんですか? でも、ダイエットをしているのはこの国の人だけじゃないんですか?」

「そうではありません。いろんな世界から、自分を変えるために人が集まって来ています。だから、悠伍さんだけじゃない。ここにいる人達は、みんな仲間なんです!」


 エマさんが喋るたびに大きな胸がバウンドする。

 どうやら身振り手振りしながら喋るのが癖なのだろう。

 その点、ステラさんは腕を組んで喋っている。何もかも対照的で面白い。


 ともあれ半ば強引ではあるが、俺はこの二人のシスターに監視? 応援? されながら、ダイエットを始めることになったのだ。

 

「そういえば悠伍さん、伝えていなかったことを思い出した!!」

 ステラさんが唐突に言う。

「なんでしょうか?」

 突然に切り出され、何か無理難題を言われるのでは? と身構える。

 ハラハラして一気に冷や汗が流れ始めた。


「このダイエット企画は目標をクリアする度に、ご褒美が与えられるんだよ!!」

「へ? ご褒美……とは?」

「あのね、悠伍さんがボクたちにして欲しいこと、なんでも聞いてあげるんだ♡」

「そ……それって……」


 ゴクリ……と生唾を飲み込む。

 もしかして、おっぱいを触らせてくださいとか……いやいやいや、そんなこと言えるわけない。でも……ハグとかなら……。ダメだ。そんなことを言えば嫌われてしまう。唇触ってもいいですか……なんてセクハラじゃないか!!

 

 もっと紳士的な願い……。


 ぅあああああ!! 煩悩!!! 消えろ!!!


「あの……因みになんですが、例えば他の人はどんなご褒美をもらってるんですか?」


 例を聞かねば分からない。

 デブでも思春期には変わりない。そういうこと・・・・・・が思い浮かぶのも無理はないと、自分に言い聞かせる。

 そして、とにかく落ち着けと心の欲を抑えつけた。


「えっと……、私達は担当するのが悠伍さんが初めてなのですが」

「そうなんですか!?」

「勿論、精一杯頑張ります!! だから、他のシスターに交代とか言わないでくださいね」

 キュルンとした瞳で見つめられる。

 艶めく唇は、今にもキスを迫って来そうだ。

「そそそそそそんなこと言いません!!」

「周りのシスターに聞いた話では、ホッペにキスとか……」

「ホッペにキスぅぅゥウウウ!!?」

 そんなの、もうDTを捨てたようなもんじゃないか!!


「ボクは、おっぱい触らせてあげたって聞いたことあるよ」

「おっ※△×○*□♡!!? はぁ!!?」

 なんというご褒美もらってるんだ? 一体何キロ痩せたご褒美だ!?

 シスターが孕んでしまうだろう!!


「悠伍さん? 大丈夫ですか?」

「本当、顔赤いよ?」

「ちょっと休憩させてください」


 想像以上の解答に、抑えつけていた欲が暴走しそうになってしまった。

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