第21話

 翌日、月曜日の夜のこと。


 ガシャーン!


「きゃあああ」

 母の叫び声が聞こえた。

 私とタツヤは、二階から急いで降りて行く。

 居間にいた母の手には、マグカップの持ち手だけがある。床には割れたマグカップと、その中身だったコーヒーがぶちまけられていた。

「どうしたの?」

「マグカップの持ち手が取れちゃったの」

「えーっ、そんなことって。火傷しなかった?」

「ええ、大丈夫よ」

「昨日は、ご飯をよそったら、お茶碗が真っ二つになったよね」

「包丁が足に刺さりそうにもなった」

 タツヤが、思い出したように付け加える。

「ヒビがいっているのに気が付かなかったのね、注意力散漫ね。疲れているのかしら」

 いつになく母は弱気だ。

「夜眠れている?」

「……あんまり、眠れていないかも」

「何か心配事でも?」

「……別に無いわよ。今夜は、早目に休むわね」

 母は笑顔を作った。


 ――やっと七年経って、死亡推定されたのよ。長い道のりだった。死亡保険金でこの家を手に入れて、これから彼と楽しくやろうっていうのに。しっかりしなくっちゃ。

 床下収納庫のお札が剥がされていて、あそこには、もう居なかった。どうして、封印が解けちゃったのかしら。酷くなったラップ音やポルターガイストは、あの人の所為ね。もう一度封印できると良いのだけれど、今度は覚醒しているから難しい。でも、何とかしなくては ――

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