第14話

『お父ちゃんは、戦争に行って帰って来なかった。召集令状が来て、出征する時、僕に万年筆くれた。お父ちゃんの万年筆が欲しくて、いつもねだっていたんだ』

 父親のことを思い出して、ゴイチは下唇を噛んで涙をこらえた。

『大切に肌身離さず持っていたんだよ。この胸のポケットに入れて』

「すると、君が最後に倒れた場所の近くにありそうね」

 私とゴイチのやり取りを黙って聞いていたタツヤは、はたと思い当たったように言った。

「じゃあ、二階には無いんじゃないかな。だって、お家は潰れちゃったんだよね?」

「潰れちゃったのだから、地面に近い所。床下?」

 私が補足する。

 この家には、二か所、台所と洗面所に床下収納が付いている。洗面所の方には、洗剤の買い置きなどが入っており、台所の方は、母が漬けた梅酒などが入っていたはずだ。

あそこからなら、床下を覗くことが出来るのではないか。


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