第11話

 この頃、タツヤの様子がおかしい。早くベッドに入っているはずなのに、とても疲れているようだ。目の下に隈も出来、食欲もない。

 日に日に、精気が無くなる気がする。

 夜中の二時頃だろうか、ごそごそ音がしていた。起きて何をしているのだろう。

 今朝、訊ねると「何でもない」と答えたけれど、絶対に何かある。

 今夜、確かめてみよう。

 私は、落語の怪談噺、牡丹灯篭を思い出していた。怪談が好きでよく動画サイトで観ているのだが。

 あれは、恋する男女の話だった。女の幽霊が通って来る度、男は衰弱していく。

 先日、タツヤが目撃したという幽霊と、タツヤの衰弱に何か関係があるのではないのだろうか。

 私は、スマホのアラームを二時にセットした。音が鳴らないようにマナーモードにするのも忘れなかった。


 日付が変わって午前二時。

 私は暗闇の中で、そっとベッドから床に下りた。耳を澄ますと、隣の部屋で話し声がする。タツヤは誰と話しているのだろう。

 音を立てずに、部屋から出ると、隣のタツヤの部屋のドアを静かに開けた。


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