第2話

 看護師をしている母は霊感が強い。

 元々霊感が強い家系のようで、私と弟のタツヤは幼い頃より、不思議なエピソードを聞かされて育った。虫の知らせや、特定の人にしか分からない音や臭いの話。旅行先での「此処ちょっと嫌な感じがする」や、夢で故人と会話する話など。だから、私達にとってオカルトは身近なものだった。

 家の怪音がラップ音ではないか問う私に、母はこともなげに言う。

「ミユ、そんな事心配していたの? これは、仕方ないのよ。ほら、家の南西の方向に墓地があるでしょ。つまり、墓地から見ると、家は北東の方向、丑寅の方向にある訳なの」

 東から日が昇って西に沈むという、当たり前のことを説明するような口調だ。

「仕方がないって。方向と音が関係しているの?」

「丑寅は鬼門って言われていて、お墓がある南西は未申、裏鬼門と言われている。」

「それが?」

 話が全然見えない。

「えっと、簡単に言うと、我が家は、霊の通り道ってことかな」

「えーっ、不味いんじゃないの? それ」

「別に。ただ通り過ぎるだけだもの」


(そうなの?)


「まぁ、そういう事もあるわよ。特に問題ないと思う」


 母は、こうした事の取り扱いには慣れている。


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