第31話 秘密の部屋(三)
(大丈夫、大丈夫だ。俺を襲う気があるなら、今までにいくらでもチャンスはあったはずだ。あいつは俺を襲ったりしない……!)
頭の中で何度もそう繰り返し、主がいる書斎に向かった。しばし
それは深い慈愛に満ちた笑みで、その眼差しは思慮深げだ。本能の
ヴァルラはドアノブを
初めて会った時から主はヴァルラに対して寛大であり、優しく穏やかだった。だからヴァルラも彼を恐れることなく仕えて来たはずだ。
だからこそ今、自分が僅かでも主を疑った事を恥ずかしく思うのだ。
「来るまでに少し時間がかかったようだが、多忙であったか? だとしたらすまぬな」
「あ、ああ。いや、大丈夫だ。こっちこそ待たせて悪かったよ」
互いに謝って、同時に苦笑する。いつもと変わらない静かな時間。しかしだからこそ気になった。ヴァンパイアである主がどうしてこう穏やかでいられるのか。
やはり人知れず、血には困らない状況を保てているからなのではないのか。そう思った時、突然「あの部屋」の事が頭を過った。
あの部屋に、何か秘密があるのではないか。
聞いた話では、輸血用に献血されたものを古くなって破棄する前に希望するヴァンパイアに配給するという試みがあるらしい。
人を襲っているヴァンパイア達も、元は普通の人間が襲われて感染したものだ。そんな彼らへの救済策として、この血液の配給というものが始まり、近頃は一般的になってきたようだ。それを何らかの形で入手しているのだろうか。
もしかすると、そういった血液の貯蔵室になっているのかもしれない。
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