第17話 たくさんの死体
「おーい、もういいぞ。出てこいよ」
ヴァルラがどこへともなく声を掛ける。が、返事はない。
「いつまで隠れてるんだ? おい! もう大丈夫だぞ」
更に大きな声で言うと、書斎のドアがゆっくりと開いた。
「対応ご苦労であったの」
主はにかっと笑う。4本の牙がちらりと見えた。ヴァルラはびくっと体を震わせ半歩下がる。
ルーファウスが他のヴァンパイアのように誰かれなく襲うわけではないと知り、更に主従の契約も結んでいることもあって、普段は彼が主を怖がることもなくなっていた。
しかし、主の4本の牙を見ると、やはり身が縮む思いがするのだ。
「警察の対応には慣れてるからな。俺も賞金が貰えるし、あれだけの数の死体を埋める手間が省けて一石二鳥だ」
「確かにあの数を埋める穴は、大層大きく深く掘る必要があったであろうな」
主はうなずきながらにこにこと笑っているが、実際ヴァルラが倒した盗賊団のメンバーは16人だった。それだけの死体を処分するのは容易ではない。
ましてやこの屋敷は周りが森になっていて、庭にも木の根が地中に伸びている。穴を掘って埋める、という処分方法は現実的ではなかった。
そこでヴァルラは、バウンティハンターとして警察に報告し、賞金を手に入れたのだ。死体は全部警察が回収してくれた。顔がわからなくなるほどダメージを受けたものに関しても、タトゥーや身に着けているものでほとんどが身元が特定できたらしい。
やはりバウンティーハンターであったヴァルラの父のチームも、逆恨みでこの盗賊団に襲われて全滅した。彼らが手にかけたのはハンターだけではない。警察の人間も一般人も犠牲になっていた。そこで警察は彼らに多額の懸賞金をかけたのだ。
一人あたり、安くても3000シードル(1シードルは1米ドル)、凶悪な幹部クラスの盗賊には20000シードル、リーダーには50000シードルがかけられていた。
ヴァルラは一気に裕福になり、屋敷の死体は片付いたのだった。
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