第22話 自称姫様に監視されながらお祭り会場を一通り回る
自称姫様と一緒に、お祭り会場に着いた。
あちこちに柱があり、線が張り巡らされていて、バチバチと音を鳴らす雷を閉じ込めた丸い球が飾られている。
覇王国伝統の雷玉が、祭りの参加者を歓迎する。
人通りが多いお祭り会場の入り口には、車の通行止めがされていたので、会場の外の駐車場に魔装甲馬車を停車した。
自称姫様は「姫様になるのにわざわざ人混みを歩くのはもう嫌だ」と言って馬車で留守番し、私が食べ物を買いに行くことになった。
自称姫様からお金を渡され、買い物かごを持って、お祭り会場の飲食エリアに向かう。もらったお金は銀板や銅板である。近所の紛争地帯で国の興亡が多いため、国の貨幣が駆逐されて、銀板や銅板が主に流通している。
移動の途中で、自称姫様から魔術通信が入る。
『もしもし・・・わたくしの声が聞こえるかしら、セバスチャン』
「もしもし・・・声が聞こえますよ、姫様」
魔装甲馬車を補助に使っているが、携帯型の魔術通信であり、戦場近くの魔力の乱れという悪条件が重なり、通信の品質は悪い。
聞き取れなかったときは、通信を安定させてから話を続ける。
『もしもし・・・右の店のフルーツクレープが食べたいわ。すぐに買って持ってきて』
「もしもし・・・はい。フルーツクレープを買ってすぐに持っていきます」
私を魔術で監視する自称姫様の指示通り、店でクレープを買って魔装甲馬車に戻った。
「クレープを買ってきましたよ、姫様」
「ありがとう・・・ほら、毒見よ。口を開けて上を向きなさい」
「はい」
毒見と称して、褒美を一口いただく。
甘い果物を柔らかいクレープ生地が包んでいて、嚙んだ時に甘さが広がって、おいしい。
「おいしいです」
「大丈夫そうね・・・うん。おいしい」
自称姫様もクレープを食べて、にこにこしている。
収納から取り出した果実水も飲んでいる。
「よかったです。それで、この後はどうしましょうか」
「ごくん・・・そうね。商人の店がどこにあるかわからないから、お祭り会場の店を全部確認して。用事があるときは、わたくしから通信します」
「わかりました」
自称姫様から指示をもらって、お祭り会場の店を全部確認する。
『もしもし・・・目の前の店の商人の店で髪飾りを買って、クラウディアの使いだと伝えて、商品を馬車に届けるように案内して』
「もしもし・・・わかりました。髪飾りを買って、姫様の使いだと伝えて、馬車に届けるように案内します」
私を監視する自称姫様と必要なタイミングで魔術通信を行い、食事と商人の案件を効率よく進めていった。
途中、魔装甲馬車の方でアクシデントがあったようだが、
『もしもし・・・わたくしは問題ないわ。魔装甲馬車を起動中だったから、自動で迎撃したわ。邪魔だから、セバスチャンが後始末をよろしく』
「もしもし・・・わかりました。戻ります」
問題なく解決できたようで何よりだ。
途中で後始末のために魔装甲馬車に戻り、そこに集まっていた自警団の人たちに説明や引き渡しなどをすることもあった。
そして、お祭り会場の店を全部確認したあと、ちょっと休んでいたら、自称姫様から魔術通信があった。
『もしもし・・・もしかして、全部確認が終わったから、休んでいるの?』
「もしもし・・・はい。確認が終わったので、ちょっと休んでました」
『もしもし・・・お疲れ様。お金が余っていたら、残りは好きに使っていいわ』
「もしもし・・・わかりました」
残りのお金は銅板が少しで、お祭りのお店の値段を考えると、ちょっとお菓子が買えるかな、という程度だった。
さっき見かけたせんべいの店で、せんべいを買えるだけ買って、魔装甲馬車に戻った。
「姫様。せんべいを買ってきました。一緒に食べませんか」
「ありがとう。いただきます」
自称姫様と一緒に、せんべいをバリバリ食べる。
「このせんべい、食べ応えがあって、満足感があるわ」
「ほのかにしょっぱくて、いくらでも食べられます」
せんべいをおいしく食べ終わった後、暗くなる前に帰路についた。
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