第21話 5歳の年末年始のお祭りに自称姫様と一緒に作った魔装甲馬車で向かう
年末になり、年末年始のお祭りが始まった。
人の出入りも多く、移動販売をする商人も見かける。
人が一番集まる祭りの中心は、山を下りないといけないので大変なのと、国外の戦場が近くて危ないから、参加する子供は少ない。
お祭りのメインイベントは、覇王国の山岳地帯で一番高い龍山の頂上で行われる。
覇王の雷で空から落とされた龍の巣跡地で、年が変わるときに覇王城の雷光が輝くのを合図に、次の年を迎えたことを祝う。
雷光は覇王の健在と、縄張りである覇王国の山岳地帯に近づく龍や外国への牽制の意味もあるらしい。
私が5歳だから、母は男を探しに外に出かけた。子供ができたあと5年我慢する男を探しているらしい。男女両方が大変なので、難しいと思う。
姉は家でごちそうを食べながら、一日リフレッシュするようだ。
・・・私は今日も、自称姫様と一緒に居る予定である。
年末になる前に幼馴染を作りたかったが、家の覗き見防止の魔術とか、携帯用プライベートルームの魔術とか、自称姫様に命令された魔術の勉強や実践に時間を取られて、他のことはできなかった。
情報戦のことなどを考えたら、そういう魔術を覚えたのは役に立つが、覚える魔術を他人が決めるのは嫌だ。
とはいえ、自称姫様とエグチの遊びは色々と勉強になる。
「わたくしの淑女バリアは、不意打ちにも自動発動するように改良したわ」
「隠蔽すれば反応できないだろ」
「悪寒がしたから避けて正解でした」
「どうやって反応したんだ!?」
魔術の自動発動、魔術の隠蔽は、家や乗り物に使うため、設置型の術式を勉強した。
「おれのロックオンからは逃れられな・・・なにぃ!?ロックオンできない!?」
「認識を偽装すれば、もうロックオンされませんわ」
「じゃあ勘だ!!」
「危なかった・・・」
ロックオン、認識偽装って、暗殺と暗殺対策かな?
もちろん必要なので勉強する。
なんか、暗殺者と標的が戦ってるような魔術のやり取りに見える。
魔術が使える子供の遊びは高度になるんだなぁ・・・。
実際に魔術を競い合った自称姫様とエグチは、どんどん魔術がうまくなっていった。
私は魔力を乗り物の製作とかに使うし、ティマヤは返り討ちにあったエグチの生命維持に全力なので、だいたい1対1を見学してる。
私は魔力機関を持たずに生まれてきたからか、他の人の魔力なんて全然感知できない。同じ術式を使うと私のほうがすぐ息切れするので、自称姫様やエグチの魔力は、私の10倍以上ありそうだ。
今年は、自称姫様とエグチのパンチラ遊びに付き合って、振り回されてばかりだった。来年は、私が振り回す側になりたい。
だから、弱い私は魔力の省力や術式効率の工夫をして継続戦闘能力を伸ばしつつ、強い彼らに勝つ方法を考えておく。
自称姫様の【淑女バリア】みたいな魔力のごり押しは無駄が大きいので、術式や詠唱、陣、地脈や伝承伝説など、なんでも利用するしかないか。
そういえば、私より喧嘩が強いウルディンギルアークが居たはずだが、今はどうしているだろうか。魔力機関を体に追加している途中かもしれない。
絶対最強になると言っていたので、ちゃんと自分より強いやつに挑んで勝ってほしいと期待しておく。
***
色々と考えつつ、魔装甲馬車にかけた封印を解き終わる。
この魔装甲馬車が、自称姫様の新しい乗り物だ。
製作には数か月かかったが、4輪の箱型の外装に、車内左右分割座席6人乗りの、後部トイレ付で機能性は高い。
基本的な部品は入手が容易な魔樹製だが、要所に守護石などの触媒を使って装飾をすることで魔術防護を追加し、安全性も高めてある。
私はトイレにこだわり、自称姫様はサスペンションやクッションにこだわって、最終的に一緒に作った。
魔装甲馬車の移動方法については、魔樹製の馬型使い魔2頭で引いてもらう方式だ。自走式の試作品を、自称姫様が膨大な魔力でぶっとばして事故を起こしたから安全のためである。
他の理由としては、私と自称姫様はどんな理由で敵になるかわからないから、それぞれ一頭ずつ使い魔を作っておいて、いざというときはどちらでも魔装甲馬車を動かせるようにしておくという事情もある。
一言でまとめると、盗んで走り出したほうが持っていけ、ということである。
「よし。姫様、封印解き終わりました・・・本日もきれいですよ」
「ありがとう。それじゃあ、お祭りに行きましょう」
「はい」
自称姫様がきれいだから、褒めておく。
これを始めたのは自称姫様に「姫様が美しいな」と言った日からで、普段から褒めておくべきだと説教されたことから、心の中だけでなく声に出して褒める。
今日の自称姫様は、青いドレスに、ほのかに光る花飾りをしている。
花弁が白くほのかに光る特徴と、刻まれた術式から触媒として使われていると考えられるため、おそらく月光魔草だろう。
強い魔力を持ち、扱える人は格が違うということを、シャンディ師匠に教えられた。その基準は、魔術をなんとなく使って頭が爆散しないほどに器がでかいこと。
つまり、自称姫様は魔力の器がでかくて、格が違うということだ。
「お祭りの会場に着いたら、どこから回りますか」
「そうね。まずは食事をしましょう。商人と会う予定もあるし、効率よく進めましょう」
「わかりました」
自称姫様を魔装甲馬車に乗せて、お祭り会場に向かって出発した。
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