第20話 【パンチラ】魔術と【君の声が聞きたいんだ】魔術の講義を受ける(強制)
エグチとティマヤが仲良くするのが落ち着いた後、魔術の授業に向かった。
しかし、エグチとティマヤが一緒だとまたいちゃいちゃする。
魔術の勉強をするためという流れで、エグチがなぜロングスカートのメイド服のことを知っていたのか、調査のために話を聞いた。
その結果、【パンチラ】魔術と【君の声が聞きたいんだ】魔術の講義を受けることになった。
「よくぞ聞いてくれた!!おれがなんでロングスカートのメイド服のことを知っていたのかって?もちろん話を聞いていたからさ!!」
「尾行でもしてたのか?」
「はっはっはっはっは!!そんなことはしてねえ。だがしかし、【パンチラ】魔術を使った相手のことだ。魔術を使った日は一日中把握できるぜ」
「!?」
どういうことだ。
【パンチラ】魔術は、パンチラさせるだけではなかったのか。
「パンチラ魔術の術式は、女の子のロックオンと計算、数値設定、起動で発動して制御する。相手の位置、服装などの身体状況、目的達成の阻害要因、おれがパンチラを見る最適な角度計算とかあるぜ」
「す、すごいな・・・!?」
パンチラを見るために、どこまで精密操作の魔術を習得したんだ・・・!?
「パンチラってのは、本当に一瞬だけチラッとして、時が止まったように目に焼き付くパンチラがいいんだよ。そのためなら、おれは時間だって止めてみせるさ」
「・・・!!」
エグチは、本当に時間すら止めてしまいそうなほどの凄味がある!!
赤い髪が火のように揺らめき、銀色の目がギラギラと欲望の炎を撒き散らして眩しい!!
・・・待てよ。
【パンチラ】魔術を使った相手のことを一日中把握できるということは。
それってもしかして、自称姫様のことをロックオンして、女の子のプライベートを一日中丸裸にしたのか。
「それって、姫様のことを一日中追いかけてたのか?そんなことしちゃだめだろう」
「・・・チガウヨ?ティマヤのことだって。おれの彼女のことだし、いいだろ?」
怪しい。ティマヤはあのとき短パンだったはずだ。
エグチが【パンチラ】魔術を使った相手は自称姫様だから、ロックオンされたのも自称姫様だろう。
ロングスカートのメイド服のことを知っていたのだから、どの会話を聞いたのか確認しよう。
「エグチの魔術で、ティマヤがロングスカートのメイド服のことを話しているのを聞いたってことか?」
「そうだ。『足首までロングスカートのメイド服を着なさい』とか話してるのを聞いた。『ロングスカートの3段フリル』とかも言ってたし、そっちも見たかったなぁ」
エグチはその後も自称姫様の話ばかりで、これは自称姫様のことを追いかけてたと考えるほうが自然だ。
「ティマヤのあの声が聞きたくて、【君の声が聞きたいんだ】魔術を作っておいてよかったぜ。ロングスカートのメイド服を着たティマヤが見られて幸せだ」
「その魔術で話を聞いてたのか」
「ああ。ロックオンした女の子の周囲の状況を受け取って、手元で計算して再現して音を聞いたんだ」
魔術の腕前は、もしかしたらエグチが一番上かもしれない。
変態は尖っているから、尖っている分野において一般人を寄せ付けないほど突出する。人間の欲望のエネルギーは、侮れない。
「教えてくれてありがとう」
「いいんだぜ。おれの魔術について話したかったし。それより親友、お前もパンチラ魔術を覚えないか」
「遠慮しておく」
「パンチラ魔術はいいぞ。女の子のパンチラは、芸術だ。あの一瞬を絵画にして壁に飾るのもいいと思わないか?」
「いらん」
エグチの【パンチラ】魔術の押し売りを振り切って離脱する。
シャンディ師匠の授業を受けている自称姫様とティマヤのところに向かい、【パンチラ】魔術が女の子のプライベートを一日中丸裸にする可能性について話した。
3人とも怒っていた。
「まさかあの魔術がそこまで」
「エグチ、あたしより姫様のことを?」
「許しません」
怒った自称姫様がエグチのところに向かおうとするが、それは私が体を張って止める。
「どけ」
自称姫様の言葉は、ずしりと重い。
体が勝手に横に動こうとするのを無理やり止めながら、自称姫様のために話す。
「変態に、対して、無策では、だめです。対抗、魔術を、覚えて、ください」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
姫様は無言で、腕を組む。
そのまま一度目を瞑り、地獄から怨嗟の声が聞こえるような音のため息をついたあと、戻ってシャンディ師匠に対抗魔術を聞き始めた。
「そうね。姫様には淑女バリア魔術とかいいかしら」
「淑女バリア魔術?」
「ドレスや下着の汚れがつかないようにしたり、範囲を広げれば髪の毛がくずれないとか、化粧が安定するとか日常生活にも便利だと思うわ」
「それで対抗できるの?」
「姫様なら膨大な魔力で、干渉を弾く効果を強めれば対抗できる」
自称姫様、膨大な魔力があったのか。
魔力機関を持って筋力強化した私に追いつけたのはそういうことか。
自称姫様は、【淑女バリア】魔術の術式を刻んだ紫色のネックレスを身に着けて、ちょっと練習したらすぐ扱えるようになった。
そして、エグチを懲らしめに向かった。
「股間はやめてくれえええええええええええええええええ!!!!!!!!」
本気で助けを求めている悲鳴が聞こえたが、助けには行かなかった。
エグチはやりすぎたんだ・・・。
ただ、念のために聖職者さんは呼んでおいた。
***
この日から、【パンチラ】魔術の改良と、【淑女バリア】魔術の改良によるいたちごっこが始まった。
私も巻き込まれて、家の魔術的な守護や、魔術の守護がある乗り物を一から作る日々が続いた。
気づいたら、年末になっていた。
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