第14話 自称姫様のメカクレ美幼女に出会った(自称姫様からは逃げられない)

 ある日、村の中、自称姫様に出会った。


 「わたくしはいつか、王子様を見つけるのよ!だから姫様と呼びなさい!」


 すごく堂々と夢を宣言している右目を隠したメカクレ美幼女。

 桃紫藍色の複雑な髪の色で、ウェーブがきれい。

 顔と手しか外に出ていないくらい、露出の少ないお姫様みたいな白いドレスを着ている。


 ちょっと遠出しただけで、今まで見たことない子供が居た。

 可能性がいっぱいだ。

 ・・・メカクレ美幼女が、四つん這いの男の子二人を足場にして、仁王立ちしているのから目を逸らしつつ。


 「「はい!姫様!」」

 「あなたたちは馬よ。馬は言葉を使わず鳴いてなさい」

 「「ヒヒーン」」


 ・・・どうしよう。声をかけるのはやめておこうか。

 周りの子供たちも、巻き込まれないように息を潜めているように見える。

 もしかして、日常茶飯事なんです?


 「・・・そこのあなた、見ない顔ね?」


 見 つ か っ た。


 「はい。なんでしょう」

 「わたくしはいつか、王子様を見つけるのよ!だから姫様と呼びなさい!」

 「はい。姫様」

 「よろしい」


 自称姫様は満足げである。

 さて、馬になるのは遠慮したいので、逃げよう。


 「それではお暇をいただきます(シュバッ)」

 「あ、ちょっと待ちなさい!」


 話の途中で走って逃げた。

 魔術で筋力強化できる私は、他の子供より足が速くて荷物運びもできると思う。

 だから便利に使われそうな予感がしたんだ。


 「あの子を追いかけなさい、馬!」

 「「ヒヒーン」」


 やばい。自称姫様に目をつけられてしまった。

 馬として姫様を乗せた子供二人は足が遅くて、だんだん距離が離れていく。

 このままなら逃げきれそう。


 「馬、遅すぎるわ。わたくしが走ったほうが速い」

 「「ヒヒーン(泣)」」


 自称姫様は馬から降りて走り出した。速い。

 あれ!?私より速い!?

 いや、魔術で筋力強化すれば!!


 「フッハッ、ふーん。なかなかね」


 自称姫様、速いよ。振り切れないよ。

 ぴょんぴょん跳ねて、一歩で移動する距離が長い。

 跳ねる様が、優雅でかっこいいな。


 「いやいやいや」


 そんなこと考えてる場合じゃないな。

 このまま逃げ続け、あれ?この方向は私の家がある方向だわ。

 家の場所を知られるほうがまずい気がしたので、足を止めた。


 「フゥ・・・あら、もう走れないの?フゥ・・・あなたは息を切らしてないから違うわね」


 自称姫様はちょっと疲れて息切れをしていた。

 走る時も見栄を張って優雅に振舞っていたようだ。

 そこはすごいと思う。


 ただ、さっきのペースで追いかけられたら、私の家についてしまう。

 どうやら、自称姫様からは逃げられない。


 「・・・私に何か御用でしょうか」

 「ふふふ。いいわね」


 何か対応をミスったのだろうか。

 自称姫様は嬉しそうだ。


 「あなた、わたくしの執事になりなさい」

 「なぜ、でしょうか」

 「そうね。まず、身だしなみが整っているし───」


 私の身だしなみは、母や姉に言われるがままなされるがままなので、よくわかっていない。

 母や姉は、服飾や美容関係の仕事をしているから、自称姫様にも評価されたのだろうか。


 「───なによりも、わたくしより身体能力が高そうだから、護衛としても期待できるわ」

 「そうでしたか」


 護衛か。

 まあ、魔物とか出るらしいから危ないのか。


 「私より強い人はいっぱいいるので、遠慮させてください」

 「わたくしがあなたを見つけたのだから、執事になりなさい」


 どれだけ断っても、諦めない自称姫様。 


 「わたくしから逃げられると思わないことね」

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