第13話 幼馴染を作り、たい

 覚悟をしてから、と思っていたが、そもそも修羅場も理不尽も逆境も、経験不足だった。眉間のしわがちょっぴりと、白髪交じりくらいか。

 家族の女の子とすらまともに話せていないのに、他の女の子とまともに話せるわけがなく。


 「へへ」


 女の子の幼馴染を作って親しくなりたい、という気持ちが前面に出てしまい、まともな会話ができず失敗した。


 「きも」

 「こいつ、けんかしてたやばいやつだよ」

 「ほっとこ」


 膝から崩れ落ちた。

 体が勝手に笑ってしまったのを止められなかった・・・。


 女の子と仲良くしようとか、そういうのって気づかれやすい。

 この体は子供で、調子乗ったり浮ついたり、だいたい全部表に出てしまうからバレバレである。


 それに加えて、どうやら男の子グループと関わったことで、女の子グループと対立した可能性がある。

 対立するグループの両立は危険だからやめておいたほうがいい。


 「・・・・・・・・・・・・・・・」


 絶望的な状況だと感じた。

 まあ、たいてい思い込みなので、歩き回ってみよう。


 しばらく歩いて、唐突に気づいた。

 ・・・あれ?もしかして、遠くまで歩けば、いつも見かける人たち以外に会えるかもしれない、と。


 2歳や3歳の頃を含めて、夢中で走り回っていたから気づかなかったけど、すぐ家に帰れる距離までしか行ったことがなかった。

 家や人の数はそんなに多くない村と思っていたが、家同士の間隔が広いだけで、遠くにはもっとありそうだ。


 「まだ、可能性はある・・・!!」


 希望が見えてきた。

 今日は色々と時間を使いすぎたから、明日以降にする。


***


 次の日。

 朝は、師匠のところで魔術を習う。


 「ティマヤ」

 「エグチ」


 エグチとティマヤトリムはずっといちゃいちゃしている。何回注意してもいちゃいちゃするので、師匠はもう諦めて放置した。


 「師匠!あいつと同じやつ!」

 「はいはい」


 ウルディンギルは、どうやら私と同じように体内に魔力機関を用意するらしい。

 ウルディンギルならば余裕だろう。


 私は、スクワットをしながら魔力による筋力強化を練習している。

 魔力の外部出力については、【自動発光】の術式を刻んだランタンを発光させるときに練習したため、やばそうなら外部に逃がすという非常手段を用意できた。

 スクワットで体を動かしながら強化して、強化対象を認識する。


 「!!」


 変な強化をして体が壊れそうなら、魔力を外に逃がして強化を解く。

 それを繰り返して、制御を練習した。


***


 練習をそこそこで切り上げて、今日の魔術の時間は終了した。


 「よし、今日こそは、幼馴染を作りたい」


 いつもより遠くに向かって、歩き始めた。

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