第10話 師匠の後始末(大人の魔術書は没収)
シャンディ師匠に、鎖でぐるぐる巻きの本のことを説明した。
「───ということになってるんですけど、師匠がなんとかしてもらえませんか」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
あとはシャンディ師匠に任せた、かった。
でも、この顔色の悪さ、心当たりがありそう。
いや、目を逸らした。もしや、元凶?
女性、紐、亀甲縛り・・・なんでもない。
「師匠、本について、心当たりがありそうですね」
「うっ」
「ここだけの話にしますから、話してもらえませんか」
「それは・・・その・・・」
「そもそもあの本って、師匠のものなんですか?」
「違う!!私のじゃない!!師匠が勝手に・・・あ」
「その話くわしく」
師匠の話はしどろもどろで混乱していたが、心当たりがなくもないらしい。
結論としては、師匠の師匠、大師匠が悪い、と主張された。
話を続けてもらうために、大師匠が悪いということに同意しているかのような相槌をしたら、続きを話してくれた。
話はシャンディ師匠が3人の弟子をとったときにさかのぼり、魔術を教えるために道具を探して荷物を確認したことで問題が発覚した。
シャンディ師匠と、夫の聖職者ブロードさんの夫婦生活がマンネリになったときのために、大師匠が善意で女性用の大人の魔術書を荷物に入れておいたのを見つけたのだ。
大人の魔術書を見つけたシャンディ師匠は、こんなもの持っていたら夫から変態とか離婚とか言われるおそろしい想像をして、道を歩いていた行商人のおじさんに押しつけた。
そこに師匠の弟子のエグチが話しかけて、渡されたものを返すだけと考えた行商人が渡して、エグチが大人の魔術書を手に入れた、という流れらしい。
・・・エグチが大人の魔術書を使おうとして、喧嘩になったのは女性用だったからと考えられる。
「でも行商人だから外に持って行ってくれると思ったし、本に封印をしておいたから大丈夫だと思ったんです。・・・それがまさか弟子の手に渡り封印を解かれるとは」
「いや行商人さんも困るでしょう。そんなやばそうなものを渡されても」
「・・・お金になるならいいのでは?」
「商人は損得勘定するらしいです。得より損が大きいと思ったから、手を出さなかったんだと思いますよ」
「とほほ・・・」
師匠は机に・・・いや、机の上に乗った自分の胸の上に突っ伏している。胸が大きくなっている気がする。2年の間、夫婦生活が良好そうでよかった。
「あーん・・・エグチくんが大人の魔術書を持ってるのは年齢的にだめだけど、私が持ってたら離婚しちゃうかもしれないしぃ・・・(泣)」
大人の女性が情けない顔を見せているー。
色々ぶちまけちゃったから、もういいやと思われてる?
年齢的に持っていたらだめなら、没収するしかないか。
「師匠がエグチから大人の魔術書を没収してください」
「だから、私が持ってたら離婚するかもって言って・・・」
「弟子から没収して一時的に保管してるだけなら、師匠が持っていても説明はできるでしょう」
「その手があった!」
師匠は夫にどう思われるか不安で、頭が回ってないのかもしれない。
さっさと師匠に解決してもらいたい。
***
エグチは相棒のことを、師匠に相談しに来た。
その場には、私とティマヤトリムも同席した。
「───という感じで、相棒と仲良くしてるんですけど、何か知ってますか」
「知ってるかもしれない。その本を見せてくれる?」
「はい」
エグチは素直に大人の魔術書を師匠に渡した。
「・・・あー、残念なお知らせだよ」
「え」
「これは大人の魔術書なので没収です」
「え!?大人の!?か、返して!!」
「エグチくんは6歳だからダメ」
「なんでだよ!!師匠のじゃねえだろ!!おじさんからもらったおれのなんだ!!返して!!」
「大人になるまでは禁止されていることがいっぱいあるの。16歳で大人になったら、そのときに返すから」
「くそぉ・・・」
四つん這いになって打ちひしがれるエグチ。
だがこれで終わりではない。
「あと、エグチくんの体から紐が生えるって話だったね」
「!?やめてくれ!!相棒まで奪わないでくれ!!」
「奪わないよ。封印するだけ」
私とティマヤトリムはエグチを拘束した。
「おまえら・・・!?」
「おとなしくして」
「早すぎたんだ」
エグチは、封印シールを4か所に貼られた。
エグチの相棒は封印された。
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