第9話 友達の相棒について聞く
さて、私以外は2年をどう過ごしたのだろう。
文字の読み書きと魔力機関を回すことで疲れて、他のことを気にしてなかったけど、エグチとティマヤトリムは6歳になったはず。
エグチのことはティマヤトリムに任せておいたから、大丈夫、かな。
「あ、エグチ───」
「よう」
エグチが、服の隙間から細い紐のようなものを4本こんにちはしていた。
シャツの上と下から2本ずつの、紐たちが一斉にこちらを向く。
「・・・なにそれ?」
「これのことか?相棒だぜ」
紐の動きが生物のようで、こちらに向かってしゅっしゅっと素振りをしている。
両手をポケットに突っ込んだ状態で、どうやってそんな風に自在に動かしている?
「何が、あったんだ?」
「お、聞いてくれるか!!実は最近、魔樹の近くに隠してた本の鎖がゆるくなってて、ティマヤトリムから逃げながら洞窟で本から鎖を取ったらさ───」
あのやばそうな本、やっちゃったのか・・・。
大人の目をかいくぐり、ティマヤトリムの制止を振り切って強行したようだ。
というか、私も血を吐いたり、やらかしてるから人のこと言えない。
「本からぶわって黒いのが出て、洞窟の壁に張り付いて絵になってよ」
「おお」
「その絵からトントンされる音が聞こえたから、こっちもトントンして」
「うん」
「そうしたらこの紐みたいなのがにゅっと」
「えぇー」
どこか別の場所から呼んだのか?
というか、呼んでいいものだったのかそれ?
「それ大丈夫なのか?」
「大丈夫だって。そのにゅっと出てきたやつとは殴り合いの喧嘩になったけど」
「喧嘩したのかよ」
「そのあと仲直りしたから」
「ど、どうやって?」
「握手すりゃ仲直りさ」
「そうか・・・(何もわからん)」
・・・ん?そういえばエグチの相棒は4本あるな。
にゅっと出てきたのは1本じゃないのか?
「なあ、エグチの相棒は、なんで4本あるんだ?」
「ああ、こいつらは、喧嘩してたときに生えてきたんだ」
「それ生えるの!?」
伝染する病気だったりするのか!?
紐生え病とか!?
「生えるっていうか・・・出し入れができるぜ」
「どういうこと?」
「出せる場所が───」
乳首、へそ、尾てい骨?の4か所らしい。
なんでその4か所なんだ。乳首から出したくない。
「なんか、もう、すごいな・・・」
「おれの相棒いいだろ?羨ましいだろ?」
「いや、ちょっと、それはエグチの相棒だから遠慮しておくよ・・・」
「そうか。じゃあ、この本やるよ」
エグチはそう言って、鎖でぐるぐる巻きにされた本を渡そうとしてくる。
全力で拒否する。
「いらん。それはエグチの相棒だろう」
「いや、この本のやつは喧嘩して仲直りした友達だ」
「友達渡すなよ・・・じゃあエグチの相棒はどこから来たんだ?エグチの中からか?」
「・・・おお!!そう!!そうだぜ!!」
「んん?」
「おれの相棒を出したときは、出し方を思い出したんだ!!だから相棒は元々おれの中に居たんだぜ!!」
「えぇー」
なんでそんな紐みたいなものが体の中に居たんだ。寄生虫か?
エグチは何かを感じていたみたいだが、私は感じないので、私の体の中には居ない。居ない!居るのはエグチだけ!
「じゃあそれエグチ専用じゃねーか!いらん!」
「そうかー」
なんとか引き下がってくれた。助かった。
「そういえば、エグチの相棒について、師匠に聞いてみたのか?」
「いや?今のところ困ってないしな」
報連相不足。不安。
「1回聞いてみたほうがいいんじゃないか?エグチの相棒の名前とか種族とかわかるかもしれないし」
「わかった。聞いてみるぜ」
・・・エグチの相棒のことを聞くと、話が長くなる。
まったく情報が足りないから何もわからないし、必要な時以外はもう聞かないようにしよう。
「あれ?ところでティマヤトリムは?」
「ん?ああ、ちょっとくすぐり勝負でノックアウトビクトリーしてきた」
エグチはめちゃくちゃドヤ顔をしている。
嫌な予感がする。
「相棒のおかげで両手両足を拘束して一方的に───」
「お前バカ!!」
「えっ?」
「えっじゃねーよ!!お前相棒のこと武器みたいなもんだって言ってたよな!!武器持って一方的にぼこぼこにしてどーすんだよ!!泣くだろ!!」
「だって笑ってたし」
「ちげーよお前が笑わせてただけだよ!!ティマヤトリムに聞いてみろ!!というか今すぐ行って謝ったほうがいいって!!」
「そ、そうか?いや、たしかに最初こわがってたような」
「そうだろ!!今すぐ行け!!」
「わかった。行くぜ」
「あ!!エグチの相棒はしまって行けよ!!」
エグチはこちらに手を振りながら相棒をしまっていた。
エグチとティヤマトリムがこじれたら、こっちも巻き込まれそうだから、ついカッとなってしまった。
その気もないのに巻き込まれてひどい目に遭うのは嫌だ・・・。
エグチの相棒について、シャンディ師匠に報告しよう。
というか、もう、正直、あとはシャンディ師匠に任せたい。
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