第5話 ドゥリンアーク、友達ができる

 豆詰まり事件の後、時間が経ってから筋肉痛に襲われた。

 魔術師のお姉さんの仲間、というか夫の聖職者さんが居たので、【回復】の奇跡で癒してもらえた。もちろんその聖職者さんは子供であろうと容赦せずに、妻にへばりつく子供を剥がして、穏やかに説教していた。

 子供を剝がすとき、聖職者さんの手が光り、【回復】の奇跡を使ったようだ。寝るときのような気持ちよさがあるため、リラックスしたことで手を離したのかもしれない。


 「他人の妻に手を出してはいけませんよ」


 その言葉を聞いてうんうんと頷いていたが、同時に蘇る記憶。

 ちょっとストレッチしてたら、人妻さんにタッチしちゃったとき。

 耳元で「そういうの好き」とか言われて、そんなつもりないのに乗り気やめろおおおお!?

 それ以来、無自覚修羅場が怖くて、女の子に手は出さないまま童貞で死んだ。

 あれ?待てよ、あの人妻さんの夫って・・・もう過ぎたことで、真相にも価値はない。だが、どこから刺されるかわからないから、人間関係に気をつけよう。


 そんなことを考えていたら、聖職者さんと一緒になって説教してた子供が蹲る。


 「いたたたた・・・」

 「おっと、あなたもどこか痛めたのですか。今【回復】しますね」

 「・・・ん・・・」


 【回復】を受けてリラックスしているのは、たぶん女の子だ。

 半袖短パンを着て、女の子座りしている。小麦色の肌に青髪翠眼のショートヘア、さっきまでキリッとしてた目がへにょってるのが良い。


 そこまで見ていたら、説教を受けていた子供が立ち上がって私の視線から隠すようにして青髪の女の子の両肩を掴んだ。

 そして、堂々と言う。


 「!・・・今のもう一回聞かせて」

 「えっ?」

 「君の声が聞きたいんだ」

 「な、なんか怪しいからヤダ」


 青髪の子の声を聞きたがる子供は、たぶん男の子だ。

 半袖短パンを着て、背中に袋を背負っている。

 髪は透き通るように赤くて、銀色の眼がギラギラで、イケメンになりそうなキメ顔をしている。

 青髪の子の声を聞かせてもらえないから、今度は聖職者さんのところに向かう赤髪の子。


 「・・・(小声)4歳にしては成長が早いように感じるのだけど」

 「・・・(小声)ほら、女の子と男の子が仲良くしてるからよ」

 「・・・(小声)そうなのかい」

 「聖職者さん」

 「はい。なんでしょう」

 「ティマヤにかけた【回復】、教えて」

 「それは、難しいかもしれないね」

 「どうして」

 「私が覚えるときは約3年かかりました。このお守りが必要だから、買うお金を用意しました。お守りを買う権利を得るために教会に認めてもらう必要があるから、教会に所属して活動しました。お守りを買ってから奇跡を使えるようになるまでお祈りしました。大変だよ」

 「うーん」


 聖職者さんが持ってる翼の生えたお守りを見ながら、赤髪の子は悩んでいるようだ。

 今の話で、私も質問したいことがあるので、聞いてみる。


 「聖職者さん」

 「はい。なんでしょう」

 「サリジールさんが【助産】の奇跡を使ってたと思うんですけど、そのお守りがなくても奇跡って使えるんでしょうか」

 「すいません。わからないです。私が知っているのは、教会で学んだ奇跡だけです。ただ、私が知らないこともあるでしょうから、このお守りがなくても奇跡を使う方法があるのかもしれませんね」

 「!」

 「そうなんですか。ありがとうございました」


 赤髪の子が、元気になった。

 そして、私に近づいて・・・近い近い肩を組まれた。顔をめっちゃ近づけてきた。


 「おれエグチアーク。お前は?」

 「私はドゥリンアーク」

 「そうか。友達になろうぜ」

 「お、おう」


 転生後初の友達ができた。やったね。


 「おれが【回復】使いたいっていうのは、聞いてたよな」

 「うん」

 「お守りなくても奇跡使えるっていう、サリジールさんのことを詳しく教えてくれないか」

 「いつの間にか【助産】の奇跡が使えるようになってたおばあさんだよ。サリジールさんもよくわかってないらしい」

 「うーん」

 「一応あとで話を聞いてみる?」

 「うん。聞きたい」

 「わかった。あとで一緒に会いに行こう。私はこれから魔術のほうも話を聞きたいんだ」

 「それはおれも聞きたい」

 「じゃあ行こう」

 「うん」


 エグチと一緒に魔術の話を聞きに行くことにした。

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