第19話 その幼女は誰なんだ
「ハハハ。違うよ。
そんな訳ないじゃないか。
なんでそう思ったの?」
2人の突飛な推測に僕は驚いた。
「だって、パーティメンバーに関わる話だろう。
そしてそのパーティメンバーは、リュウを除いて全員ここにいる。
といいうことは、つまりリュウを…
って考えるのは自然だと思うが。」
「そうそう。それにアキラはリュウに不満が溜まってるだろうから、とうとうこの時が来たのかと思っちゃったの。」
「なるほど、一理あるね。
だけど誤解してるよ。
僕はリュウに不満なんて持ってないし、かけがえのない仲間だと思ってる。」
「それを聞けて安心した。」
エマは小さく頷いた。
「でも、それなら誰に関わる話だ?
もしも私なら遠慮なく言ってくれ!」
「違う違う。今はいないメンバー。
つまり、5人目のメンバーって言ったらいいのかな。
もう1人、メンバーを増やさない?ってことなんだ。」
「えー、なんで??
パーティの基本は4人って、アキラが前に言ってたじゃない。」
「うん。そして、それは戦力の足し算効率の話だって言ってたと思うけど。
うちのパーティの場合は少し事情が違うなって思い始めてて。
まず前提なんだけど、僕のバフ、効果範囲が増えて5人くらいなら強化できそうな んだ。」
本当はあと10人増えてもまだまだ大丈夫だと思ったけど、それを言うのは控えた。そんなに人数が増えたら、戦力の効率より人間関係のバランスでパーティが崩壊しそうだ。ただ、旅立ちを控えて、僕はどうしてもあと1人分は戦力アップを図っておきたかった。
「例えばある術師が100の力を持つ仲間を130にバフしたとするでしょ。
術師自身は全く戦えないとして、そんなコンビと。
単純に100の力を持つ2人組が戦ったらどっちが勝つと思う?」
「それは微妙だな。130の実力者1人と、100の冒険者2人の戦力比較か。
戦いのスタイルもあるし、相性の問題もある。
やってみないとわからないんじゃないか。」
「それが、そうでもない。
その130の実力者は、戦えない術師をかばいながら戦わないといけない。」
「そうか。それなら2人組が圧倒的に有利だな。
つまりその場合は術師に存在意義がないってことか。
術師を仲間にするより、100の実力者を仲間にしたほうが強い。」
「その通り。
じゃあ、その支援職が2人にバフをかけることができたらどうかな。
実力130が2人と足手まとい1人のチーム。
それと実力が100の3人チーム。」
「それならやっと戦力は均衡するかもしれないな。
うちのパーティを指しているのか?」
「んー、一般的な付与術師の戦術的価値とか利用の話。
うちの場合でいうと、僕は4人全員にバフがかけられるからね。
僕と回復役のグレースも攻撃役2人の足手まといにならない程度には動けてると思う。」
「それはそうだな。
そう考えると、その部分がパーティにおけるアキラの戦略的価値ということか。」
「そう。バフなんて、その程度のものだと思うんだ。」
そして今の話からもう1つ言えることは、付与術師はバフをかける対象を増やすことで、その価値を飛躍的に高められるってこと。
「僕が5人にバフがかけられるようになったから、5人パーティの形が、1番戦力アップに結び付くと思う。」
「確かに。さっきの例でいうと、130の実力者が3人で足手まといなしの状態。
これなら実力100のものが5人いても簡単に倒してしまうだろうな。」
「そうなんだよ!まさにそういうこと!」
本当は僕のバフで、10人の力をそれぞれ3倍にだってできると思う。これまで僕は、付与術師としてのジレンマに悩んできた。付与術師がメンバーを強化しても、術師自身が足手まといになってしまったら意味がない。また、術師はその役割でパーティメンバーの椅子を1つ埋めているのだから、最低限、その1人分の戦力アップができなければやっぱり存在意義が生まれない。
だけど、付与術師の力が強まれば、その戦術的価値は一気に10人分、100人分にも跳ね上がる。今、そんな夢のような可能性が、明確な輪郭を帯びて僕の目にはっきりと映っている。だけどさ、そんな大所帯、もちろんうまく機能する保証はないしね。まずはリスクやデメリットを抑えて、慎重に行動するのが僕のやりかた。
「で、その新メンバーは男なの?まさか女?」
僕とエマが戦力談義をしている間、グレースがやけに大人しいと思っていたんだ。まさか、そんなことを心配していたとは。でも、確かに新メンバーが増えるのは楽しみだもんね。その気持ちはわかる。
「ごめん。新メンバーに当てがあるわけじゃないんだ。
パーティの方向性として、意見を聞いておきたくて。」
「そうなんだ。まあ、パーティが強くなるなら私は文句はないわよ。」
「うん。私もだ。
話を聞く限り、欲しいのは攻撃役だから、男性メンバーがいいかもしれないな。
「そうだね!
じゃあ、次にパーティ全員が揃ったときに、改めて提案させてもらうよ。」
「そうね。リュウがなんていうかはわからないけど。」
それから数日後、僕たちは久しぶりにギルドの食堂に集まった。
1番遅れてきたリュウが、見知らぬ幼女を連れている。
僕たちが視線をやると、彼女は屈託のない笑顔で会釈した。短く切りそろえられた、軽やかで少し跳ねた黒髪の下で、どんぐりのような大きな瞳が僕たちを興味深そうにのぞいている。
「こいつはリゼット。うちの新しいパーティメンバーだ。」
えーーーーーー!!
☆☆☆
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