第5話 宴会
家に着くと、母さんと父さんがせっせと料理を運び出している最中(さなか)だったので、
「何か手伝えることある?」
と訊くと、母さんが、
「何言ってんのよ、今日の主役はあなたなんだから部屋で休んでなさいよ。」
と言ってきたが、僕が、
「え、でも…」
と反論しようとすると、父さんが、
「でもじゃない。休んでなさい。」
と、有無を言わさぬ口調で言ってきたので、あ、こりゃ何かあるな、と勘づいて、わざと落ち込んだ風に
「はぁい。わかったよ。」
と言って、内心、期待でワクワクしながら階段を上がって自分の部屋に行った。そして、とりあえず、対話型の記憶整理魔法、メモリーサーチを作って、会話相手になってもらっていた。そして、母さんの、
「宴会の準備、完璧にできたみたいだから降りてきていいわよ~」
という声を聴いて、階段を下りて、母さんと一緒に宴会が行われる村の中央の広場に向かった。広場に着くと、村にいる全員が集合していて、一斉に、
「誕生日おめでとう!!」
と言って、あらかじめ遅延発動を仕込んでいたのであろう、花火の魔法を打ち上げて、大輪の花火を咲かせてくれたのだった。そして、村長さんの、
「カイル君も来たことだし、みんな飲み物を持って~」
という声に合わせて、みんな飲み物を取りに行き、
「カイル君の成人と魔法覚醒に」
「「「「「「「乾杯!!」」」」」」」
と唱和して、宴会が始まった。宴会が始まると、アイリスとアッシュが寄ってきて、
「「成人おめでとう、カイル。これ、成人祝い。二人で1つね(な。)」」
と言って、少し縦長の木箱を渡してきた。箱を開けると、金色の首掛け式の懐中時計が入っていたので、
「こんなに高価なもの、もらってもいいの?ただでさえも懐中時計って高いのに金色のなんて。」
と言いながら、心の中で、
(鑑定魔法、作れる?メモリー。)
と訊き、
(作ったよ。鑑定してみて。)
と答えてくれたので、
(鑑定)
と呟くと、 ヴゥンという音とともに、
懐中時計
一番外側がすべて錬金魔術で作られた純金製。重くなりすぎないよう、極限まで薄く作られている。
非売品。 相場価格:100億Gil(ギル)
製作者:ガッシュ
と目の前に出てきて、目ん玉が飛び出るかと思うほど驚いて、
「ちょっ、おい!これはやばいだろ。相場価格、頭おかしいことになってるぞ。」
と言うと、
「実をいうと、加工費はタダにしてもらったんだよ。親父がいらないっていうからさ。それと、この近くに金鉱山があるのは知ってるよな?そこで自分で採集してきたもんだから実質無料なんだわ。」
と答えられて、一瞬納得しかけたが、
「いや、でもこれはやばいだろ。」
と言いつつ、
「ありがとう。」
と言って、ありがたくもらっておいた。そして、今度は父さんが近づいてきて、
「成人、おめでとう。カイル。これ、父さんからの成人祝いだ。」
と言って、細長い木箱を渡してくれたので、父さんの顔を見返して、
「開けていいの?」
と訊くと、父さんは、
「もちろん。開けてくれ。」
と言って、木箱を手渡してきた。開けてみると、銀白色に輝く鞘に入ったけど、刀が入っていて、まさか、と思い、咄嗟に、
(鑑定)
と魔法を発動させると、
始原
超一流の鍛冶士が渾身の力を込めて作った刀。これを越える剣はこの世界には存在しないし、この世界唯一の剣。神剣をも越えた究極の一振り。その価値は計り知れず、この世界で唯一、魔法を載せても絶対に壊れない。魔法を載せることで切れないものは存在しない。
材質:神域金属
不壊 加護
破壊不能属性
相場価格:鑑定不能
製作者:ガッシュ
カイル専用装備
と出てきて、もう一度、破壊不能属性について鑑定してみると、
破壊不能属性:
どんなものでも防御を無視して切れる。絶対に壊れないし、魔法、結界、ありとあらゆるものを魔力を用いずとも切れる。再生不能の魔法を載せることで絶対再生するものでさえも殺せる。
と出てきて、思わず、父さんの方を向いて、
「これの価値わかってる?」
と訊くと、
「いや、ガッシュからは渾身の一振りになったとしか聞いてないぞ。そんなにやばいのか?」
と訊かれ、そんな悠長な、と思いながら、
「これ、聖剣さえも越えたほんとの意味で究極の剣なんだけど。」
と答えると、
「え、まじで?」
と訊かれ、
「それと、気づいてないかもしれないけどこの件の材質ミスリルじゃないからね。」
と言うと、
「えっ!?」
と驚いた表情をして、
「神域金属っていう、もはやまったく意味の分からない金属に変質したみたいだよ。」
と言うと、
「うん、そりゃやばい。」
と答えて、頭を振りながらそのまま去って行ってしまった。そして、隣で話を聞いていたアイリスとアッシュが、
「「とりあえず、料理、食べに行こう。」」
と言ってきたので、
「ああ、うん、そうだね。行こうか。」
と答えて、料理を取りに行ったのだった。料理を何品か取って広場のベンチに座ると、僕は、
「ところでなんだけど、魔法っていう僕唯一の力を見つけたことだし、冒険者になろうと思うんだけど、二人はどうするの?」
と話を切り出した。すると、
アイリス、アッシュそれぞれが、
「私もカイルが成人したら一緒に冒険者になりたいと思ってたし、賛成!」
「うん、俺もそれは思ってた。特にカイルが魔法を使えるようになったからな。」
と答えてくれたので、
「うん、じゃぁ、明日は1日準備して、明後日ここ、エナス村からドゥオルビス市に向かおう。」
と言うと、
「「うん(ああ)、そうだね(な)。」」
と答えてくれたので、
「一応、母さんたちに伝えに行こう。」
と言って、母さんたちを探して、見つけてすぐに、
「ぼくたち、冒険者になろうと思う。」
と伝えると、
「やっぱりそうなるか。世界を見ておいで。」
と言われたので、
「ありがとう。母さん。」
と言って、そこから離れてまた料理を取りに行った。しばらくして、村長さんが、
「夜も更けて来たし、そろそろお開きにするぞい。」
と言ったのを機に、僕たち3人はそれぞれの家に帰って行った。そして、明日に備えてすぐに寝たのだった。
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