第10話
俺は曇天を見上げて、不気味な笑みを浮かべてみせた。
「あんた達知ってるか?こんな天気の日は…あいつがくるかも知れないぜ」
覆面どもが若干ざわつく。
「言わせておけ。どうせハッタリだ」
王子を捕らえている、リーダー格らしき覆面が言う。
そのとおり、ハッタリだ。だがこのハッタリに俺は全てを賭ける。
「稲妻あるところに現れる、近寄るだけでも危険なあの幻獣…そう、こんな歌と共にやってくる」
俺はおどろどろしい声で歌い出す。
「ゲン ゲン 幻獣サンダーポメラニアン」
覆面たちが失笑する。だが俺は怯まない。
「雷鳴と共にワオーン「ワオーン」
見ると王子が、一緒に歌い出していた。顔は真剣そのものだ。
「山の谷間にワオーン「ワオーン」
空がますます暗くなってきた。
「触るとビリビリ刺激的」
ドロドロドロドロ…雲から重低音が響いている。
俺たちのいる場所の頭上にだけ黒い雲が渦巻いているのだ。
「あっという間に感電死」
異変に気づいた覆面リーダーが、にわかに焦りだす。
「や…やめろ、その不気味な歌を今すぐやめるんだ!」
もう遅い。俺はニヤリと笑うと、最後のフレーズを歌い上げた。
「危険 危険 かわいいけれど危険なポメちゃん 幻獣サンダーポメラニアン!」
ビシャーーーン!
巨大な毛玉が、再び俺たちの前に姿を現したのだ。
覆面たちが動揺している。この時を待っていた!
俺は走り出すと先ほどから目をつけていた「頭上注意」と書かれた看板を思い切り引き抜いた。
長年の鍛錬で体に染みついた(いやこの身体には染みついてはいないんだが)斧術の構えをとり、王子を押さえている覆面リーダーの脳天に看板を渾身の力で振り下ろした。
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