第9話

チ ク ワ と り に い く し か ね え っ!


俺たちは村を飛び出し、大急ぎで来た道を引き返した。

おふくろさんの体力があとどれくらいもつかわからねえ。

事態は一刻を争うのだ。

行きはサンダーポメラニアンとウカレポンチキノコのせいで時間をくっちまったが、邪魔さえ入らなければチクワの生えていた洞窟まで日帰りで行って帰ってこられるはずだ。


覆面をした集団が俺たちを取り囲んだ。

あー!さっそく邪魔が入ってきやがった!

「ここから先はとおs「こちとら急いでんだよっ!!」

俺は一切移動速度を緩めずに目の前の相手を吹っ飛ばした。

つもりだった。だが俺は相手につき飛ばされ、無様に地面に転がっていた。今の俺がいつもの7割くらいの大きさしかなかったことを忘れていた。。

ちくしょう。これだからヒュ-マンの身体なんて嫌なんだ。

あっという間に俺たちは取り囲まれる。

「やめろ!放せ!」

王子が覆面の一人に捕らわれ、必死に抵抗するが、しっかりと押さえこまれてしまう。

くそ。最悪だ。

俺はできる限り早く立ち上がった。予想外の転倒で若干頭がくらくらする。

「武器を捨てろ。王子の命が惜しければな」

覆面が王子の首筋にナイフを突きつける。

武器、か。

ああ、そういや俺武器持ってたっけか。自分の腰にある長剣をちらりと見た。

「はいはい、こんなもんいらねえから別にいい」

さっさと剣を外して投げ捨てたので、覆面どもは若干面食らった様子だった。

「ずいぶんあっさりしているものだな」

「いやあ、俺、剣あんまり得意じゃねえんだもん。振り回したってろくに戦えねえ」

実は俺は斧使いなのだ。剣とはリーチも違うし、身体の動きも全然違う。

とはいえ、唯一の武器を放棄した俺は今や丸腰だ。

一方の相手はみんな武装している。つまりこの状況、相当やばい。

だが俺は何とかする男。こんなところで諦めるわけにはいかんのだ。

「そいつが王子ってわかってるってことは、中央の誰かの差し金か。王子誘拐か暗殺目的ってとこか」

「ふん、部外者の貴様が知る必要などない」

とりあえず喋って時間を稼ぐんだ。考えろ、何とかするんだ、俺!

剣もそうだが、斧なんてそうそう都合よくそこいらに落ちているものではない。

斧じゃなくてもいい、長い棒の先にぶん回せる何かついてるものでもあれば・・・


あ。


あれならいけるかも。

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