第10話

 なんかもう、庇護欲というか、義侠心というか、熱い感情がぶわーっと込み上げてきている。いやだってさ、おふくろさんが死にそうで泣いてる子どもが目の前にいるんだよ?この上なく「なんとかしたい」欲がムラムラと立ち上ってくるだろ、この状況。あー、ほんと、なんとかしてやりたいんだが、なんとかならねえかな。なんて俺は歯を食いしばりながら灰色の空を見上げていた。


 先の村人が、食事を用意していてくれたので、ご相伴にあずかることにした。この人物はこの村の医師らしく、王子の母とも親しかったらしい。

「あの方をお救いする方法を手を尽くして探したのですが、力及ばず…申し訳ございません」

医師は必死で彼女を治療しようと奔走してくれていたようで、顔には深い疲労が刻まれていた。

「古文書に記されていた万能薬と呼ばれるものが手に入れば望みはあるやもしれませぬ。実在するかどうかもわからぬものではありますが」

…あんたの気持ちはわかるが、不確かな情報を出して、母の死に目に会う覚悟をしてきたこいつに変な希望をもたせるんじゃねえよ。俺は苛立ちを覚えた。

「それは、どういうものなの?詳しく教えてほしい」

ほら、王子が食いついてしまった。余計なことを。

「このような形をしていると書かれておりました」

医師は古い紙を広げてみせた。円筒状のものが岩肌から突き出している。ちょっと待て。これに似たものを最近見た覚えがあるような。

「強い毒を持つ危険な獣がその万能薬を口にしたところ、体内の毒がすっかり解毒され禍々しい色の姿から、光り輝く姿へと変貌を遂げたという話が…」


「絶 対 あ の チ ク ワ じ ゃ ね ー か !!!!」」

俺と王子の声がユニゾンした。

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