第6話
行きがかり上ついていった子どもが相棒の子ども時代の姿かもしれない…つまり俺はタイムスリップした可能性があるということか。そしてこの体の持ち主はこの時代にここにいた人物で、俺はその体に入っているという仮説も立てられる。
そもそも今俺は現実の世界にいるのかどうかも疑わしく、夢を見ているだけの可能性もあるが。そんな思考を頭の中でぐるぐる回転させながら歩いていたら、目的地に着いてしまった。
そこは城ではなく、小さな村だった。王族が一体こんなところに何の用があるというのだろうか。
俺たちの姿を認めて、1人の村人が走り寄ってきた。
「まさか!あなたさまは…」
「そのまさかだ」
王子は口の前に指を立て、大人のような仕草で相手に内密にするよう伝えると、真っ直ぐ相手を見つめて、静かに告げた。
「母上に、会いにきた」
俺たちは、村のはずれのこぢんまりとした建物に案内された。王族にはおよそ似つかわしくない素朴な佇まいの小屋。ここに本当に王子の母がいるのだろうか。
「すまない。ここからは、2人だけにしてほしい」
俺は黙ってうなずいた。
王子は1人で小屋の中に入って行った。
空が、ぐずつきはじめていた。
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