第7話

「え?ホントに?」

「うん、同じ名前。あり得ないよ」

「ありえないってことはないんじゃねえか?同じ名前がたまたまつくなんてこと、よくある話じゃ・・・」

「いや、我が血筋に限っては絶対にあり得ない。名前は唯一無二のものと考えられているから。王族で名前が同じということは同一人物を意味する。他国の王族の名前もちゃんと調べて名づけは行われるし」

「つまり、お前さんは俺の相棒と同一人物ってことか?」


いや、確かに色々似てはいるよ。黒と茶で彩られた顔の模様もそっくりだ。

けど、相棒は大人で、俺と同じくらいの年齢。こんな小さな子どもじゃない。

何?何なの?俺もしかして時空を超えて過去に迷い込んじゃったの?

たしかに?この身体も俺のじゃないし?この時代の俺が今まさにこの世界のどっかにいるわけ?もしばったり出会ったらどうなっちゃうわけ?


俺の頭上に「?」がコバエのようにうるさく飛び回っている。

うっとうしくてたまらん。

「やめだやめ!考えるの終わり!この話終わり!!」

俺は頭の上の「?」をひっつかむと、持っていた枝に全部串刺しにして火にくべた。


「とにかく、今は全部焼いて食う!お前も食え!」

「だから、ぼくはキノコは食べないって・・・」

「えー、いいのかあ?このかぐわしい香りを嗅いでも食べずにいられるのかあ?」

俺はいい塩梅に焼けたウキウキノコを子どもの鼻先に突き付けた。

唾を飲み込む音が聞こえた。朝に果物を食べてから何も食ってないんだ、腹は減ってるだろう。

「腹が減ってるときに考えることなんざろくでもない。ごちゃごちゃ考えるのは食ってから。その後ゆっくり考えりゃいい」

やつは逡巡していたが、おそるおそるキノコを口に入れた。

「・・・おいしい・・・!」

「だろ?なんてったってウキウキノコだからな」

久々に食べたがやはりうまい。あまりのうまさに身体がウキウキ踊り出しそうだ。

というか、俺とこいつは気が付いたら本当に踊り出していた。

「お?どうした?」

「わからない。身体が勝手に・・・」


「あっ!!!」

俺はとんでもないことをしでかしていた。踊りながらしおしおと告げる。

「すまん。これ・・・ウキウキノコそっくりの『ウカレポンチキノコ』だった。食べると消化するまで踊り続ける毒キノコだ。毒っつってもそれだけしか作用はないんだが」

「もう、なにやってんだよお!」

子どもはウッキウキのステップを踏みながら、顔をくしゃくしゃにして叫んだ。


「ぼくは・・・もう二度と キ ノ コ は 食 べ な い !!!!」


俺たちは、夜が更けるまでノリノリで踊り続けた。

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