第5話
「え?ホントに?」
「うん、同じ名前。あり得ないよ」
「ありえないってことはないんじゃねえか?同じ名前がたまたまつくなんてこと、よくある話じゃ・・・」
「いや、我が血筋に限っては絶対にあり得ない。名前は唯一無二のものと考えられているから。王族で名前が同じということは同一人物を意味する。他国の王族の名前もちゃんと調べて名づけは行われるし」
「つまり、お前さんは俺の相棒と同一人物ってことか?」
いや、確かに色々似てはいるよ。黒と茶で彩られた顔の模様もそっくりだ。
けど、相棒は大人で、俺と同じくらいの年齢。こんな小さな子どもじゃない。
何?何なの?俺もしかして時空を超えて過去に迷い込んじゃったの?
たしかに?この身体も俺のじゃないし?この時代の俺が今まさにこの世界のどっかにいるわけ?もしばったり出会ったらどうなっちゃうわけ?
俺の頭上に「?」がコバエのようにうるさく飛び回っている。
うっとうしくてたまらん。
「やめだやめ!考えるの終わり!この話終わり!!」
俺は頭の上の「?」をひっつかむと、持っていた枝に全部串刺しにして火にくべた。
「とにかく、今は全部焼いて食う!お前も食え!」
「だから、ぼくはキノコは食べないって・・・」
「えー、いいのかあ?このかぐわしい香りを嗅いでも食べずにいられるのかあ?」
俺はいい塩梅に焼けたウキウキノコを子どもの鼻先に突き付けた。
唾を飲み込む音が聞こえた。朝に果物を食べてから何も食ってないんだ、腹は減ってるだろう。
「腹が減ってるときに考えることなんざろくでもない。ごちゃごちゃ考えるのは食ってから。その後ゆっくり考えりゃいい」
やつは逡巡していたが、おそるおそるキノコを口に入れた。
「・・・おいしい・・・!」
「だろ?なんてったってウキウキノコだからな」
久々に食べたがやはりうまい。あまりのうまさに身体がウキウキ踊り出しそうだ。
というか、俺とこいつは気が付いたら本当に踊り出していた。
「お?どうした?」
「わからない。身体が勝手に・・・」
「あっ!!!」
俺はとんでもないことをしでかしていた。踊りながらしおしおと告げる。
「すまん。これ・・・ウキウキノコそっくりの『ウカレポンチキノコ』だった。食べると消化するまで踊り続ける毒キノコだ。毒っつってもそれだけしか作用はないんだが」
「もう、なにやってんだよお!」
子どもはウッキウキのステップを踏みながら、顔をくしゃくしゃにして叫んだ。
「ぼくは・・・もう二度と キ ノ コ は 食 べ な い !!!!」
俺たちは、夜が更けるまでノリノリで踊り続けた。
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