第2章 女同士 その②

「警察いこうよ」


 父に心配をかけたくなかった私は首を横にふった。


「わかった。無理強いはしないね。美容院行って整えてもらおう」


 香乃のはからいで、予約なしでも美容室を融通してもらえることになった。


 今になって恐怖が湧き出てきた私はオロオロし、香乃の親切に甘える。


「100本ほど、10センチくらい無くなってますね。100本って1日に抜ける髪の量ですから、いうほど多くないですよ」


 多いとか少ないとか、そういう問題じゃないのに。


 美容師さんと話してる間に、香乃は彼女の母親に連絡していた。美容室を出ると、セダンに乗った女性が手を振っている。香乃の母が迎えに来たようだ。


「橘さんのお母さんに、私から連絡しましょうか?」


「母はいないんです」


 香乃のお母様は特に驚くこともなく、明るく言う。


「いろんな家族の形があるわよね」



 車の中で香乃は、私の左手に香乃の右手を重ねてきた。


「怖かっただろうね。私がせめて新宿まで迎えにいけばよかった。ごめんね」


 もしそうなっていたら香乃が被害に遭っていたかもしれない。そんなこと、耐えられない。


「音楽でもかけて気分転換しよ」


 香乃はMadonnaのExpress Yourselfをかける。これは家で聞いてもOKな曲だ。


 ほどなく香乃の家に着く。


「すぐ用意しますね」


「すみません」


「いいのよ。少し待っててね」


「先にクッキー焼いちゃおうか?」


 香乃が横から口をはさむ。


「お菓子は料理のあと!」


 3人で笑う。


 

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