第20話 レリーアの罠

 暴れる鳥を、イリアがじっと見る。


「どうして魔物って分かるの?」

「本で見たからよ。それに、こんな人工物を付けた魔物なんている訳ないでしょ。」


 その鳥の魔物は、目に黒い眼鏡のような物を着けている。

 どこからどう見ても、普通の獣と違うのは明らかだ。


クエッ、クエーーーーーッ!


 魔鳥は、暴れながら騒いでいる。

 そんな魔鳥の言葉に、生徒の一人が首を捻る。


「なんか言ってる。多分、離せコノヤロー。かな?」

「何で分かるんですの…。」

「えーと、なんとなく?」


 当の魔鳥は、自身に巻き付くつるをほどくように暴れている。

 そこからイメージをして想像したのだろう。

 そんな魔鳥は、更に激しく暴れている。


クエックエッ、クエーーーーーッ!


「今度はなんて?」

「えーと…。」

「いつまでも見てんじゃねー。みたいな?」

「俺にも芋を食わせろーかもよ?」

「あははっ、絶対ちがうっしょ。」


 突然、魔鳥が何を言っているかを当てるクイズが始まった。

 当の魔鳥を無視して盛り上がる。

 そして、一斉に翻訳が出来る生徒を見る。


「「で、正解は?」」

「とっととほどかないと潰したるぞ。かな?」

「「そっちかー。」」

「楽しんでる場合じゃないでしょ!」


クエッ! 


 こんな姿でも、一応は魔物だ。

 うかつに近づいていい相手ではない。

 そんな魔鳥から庇うように兵士が割り込む。


「申し訳ないけど、何がどうなってるのか説明してもらって良いかな?」

「見ての通りですわ。野菜を盗もうとしたものを捕まえるように、野菜に魔法をかけましたの。犯人の狙いが野菜なら、必ず掴む筈ですから。」


 どんな相手でも、盗む際は野菜に触れる。

 その時に発動するように、魔法の罠を仕掛けていたのだ。

 それを聞いた兵士は納得する。


「つまり、この魔物の鳥が犯人という事だね?」

「その通りよ。まんまとかかってくれて感謝するわ。」


クエエーーーッ!


「チクショー! かな?」


 悔しそうに暴れる魔鳥。

 自分が罠にかかったと知って悔しいようだ。

 そんな魔鳥へとレリーアが指をさす。


「そんな訳で、貴方の負けですわ。このまま焼かれるか蒸されるか選びなさい!」

「選びなさい!」

「何でイリアさんが威張ってるんですの…。」


 イリアとレリーアが魔鳥を追い込む。

 それを受けた魔鳥は、汗を流しながら黒眼鏡の奥の目を泳がせる。

 そして、限界に達した魔鳥は…。


ク、ク、ク、クエーーーーーーーーーッ!


「な、何ですの!?」


 いきなり叫んだ魔鳥の声に耳を塞ぐ一同。

 その甲高い声は、森の奥まで響く。


「さっきの声はっ?」

「助けてーかな?」

「助け? まさかっ。」


 どうやら、先程の声は助けを呼ぶ声のようだ。

 つまり、仲間がいるという事だ。

 そして、その声に答えるように森の奥から大きな羽ばたきが聞こえてくる。


「俺の子分を虐めてる奴ぁ。」

「え?」


 羽ばたきと共に聞こえてくる声。

 そして、大きな黒い影が落ちてくる。


「どこのどいつだぁ!」


 そうして落ちてきたのは、魔鳥を大きくしたような存在だ。

 その大きな魔鳥は、睨みながら怒鳴りつける。

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