第19話 野菜泥棒の犯人

 村の中心部にある建物へと、一人の村人が駆け寄る。

 その手には、つるが着いたままの芋を複数持っている。


「持ってきましたよ。つるのある食べ物。」

「ありがとうございます。では、このざるの上に置いて下さい。」


 レリーアが手に持つざるへと、芋を置く村人。

 すると、レリーアはざるを建物の軒下へと置き手を当てる。

 その光景を、不思議そうにイリアが覗き込む。


「どうするの? それ。」

「見てのお楽しみですわ。」

「えー、教えてよー。」

「心配しなくても、すぐに分かりますわ。」

「え?」


 勿体ぶるように、答えを言わないレリーア。

 そんなレリーアは、手をかざし終えると立ち上がる。


「準備完了よ。後は、ここから離れるだけね。」

「私達もかい? 見張りぐらいは出来るけど。」

「いらないわ。目撃されてないという事は、こちらがいない時を狙ってる筈ですから。」


 兵士の提案を否定するレリーア。

 見張りで見つけられる相手なら、既に見つけられている筈だ。

 敵を誘き寄せる今、かえって邪魔になるだろう。

 そんな事で、一同は離れた場所へと移動する。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 それからすぐの事。

 イリア達は、焼いた芋を食べていた。

「もう一個もーらい。」

「あ、私も。」

「つーか。芋の皮まで甘いって凄くない?」

「一気に食べると喉を詰まらせるわよ。」


 騒ぎながら芋を食べ続ける。

 その芋を食べる手は止まらない。

 それでも、まだまだ芋はある。


「沢山用意しているので遠慮はいりませんよ。どんどん食べて下さいね。」

「「「はーい。」」」

「ありがたく頂かせて貰いますわ。」


 元から来客用に用意していたのだろう。

 村人や兵士も混ざって美味しく食べる。

 その横で、村長が槍に刺した芋を焚き火に突っ込む。


「ほほっ。どうじゃ、わしが焼いた芋加減は。」

「最高です!」

「そうじゃろ? そうじゃろ?」


 イリアに褒められ喜ぶ村長。

 いつの間にか目が覚めたようだ。

 それを見た村人が、呆れた目で村長を見る。


「さっきまでぐっすりだったのに、すっかり元気ですね。」

「当然じゃろ。こんな芋の美味しい匂いを嗅いだら、寝てなんていられる訳ないわい。ほら、どんどん焼いちゃるか次持ってこーい!」

「持ってこーい!」

「どんなテンションですのよ…。」


 村長と共に、イリアが声を上げる。

 その姿は、とても上機嫌だ。

 その横で、生徒二人が笑い合う。


「もしかしてさ。槍が上手いって芋を焼くことなんじゃ?」

「あははっ。言えてるーっ。」


 実際に、槍を焼く姿は様になっている。

 芋を焼いてる本人も上機嫌だ。

 すると、イリアが残りの芋を一気に口へと詰め込む。


「そういえばさ、このまま呑気にしてて良いのかな。」

「構いませんわ。そろそろの筈ですから。」

「そろそろ?」


 野菜を盗んだ犯人を捕まえる予定の筈だ。

 それなのに、こうしてだらだらとしていて良いのだろうか。

 その時、どこからか翼を羽ばたかせる音が聞こえてくる。


「な、なんだっ!?」

「かかりましたわね。犯人。行きましょう。」

「お、おいっ。」


 周囲が慌てる者達を置いて駆け出すレリーア。

 そうしてすぐに、現場へと戻る。

 すると、そこではつるに絡まった鳥が暴れていた。


クエックエーーーーーッ!


 羽をばたつかせてはいるものの、どんどんつるが絡み付いていく。

 そして、翼にもまた強烈に絡み付く。

 これでは、飛ぼうにも飛ぶ事は出来ないだろう。


「やはり、犯人は鳥だったか。」

「しかも、魔物の方のね。」


クエーーーーーーーーッ!


 その魔物の鳥は、こちらへと睨み付ける。

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