第17話 村長との出会い

 兵士達についていくと、とある家の前で止まる。


「村長さん、生徒さん達が来ましたよ。」


 そう建物へと大きな声で叫ぶ兵士。

 すると、奥の方からバタバタと足音が聞こえてくる。


「はーい。今行きますね。」


 騒がしい足音と共に扉が開かれると、若い女性が現れる。

 若いと言っても、四十代ぐらいか。

 その女性を見て、イリアが疑問を浮かべる。

 

「あの人が村長? なんか若いね。」

「いや、あの人は村長の孫だよ。」

「ま、孫!?」


 孫と言うのなら話は変わってくる。

 あの年で孫なら、村長の年齢はどうなっているのか。

 その女性は、生徒達を見てお辞儀する。


「ようこそ我が村へ。さ、お爺ちゃんが待ってますよ。どうぞ、ごゆっくりしていって下さいね。」

「「「はーい。」」」

「おじゃまさせて貰いますわ。」


 微笑む村長に案内され建物の中へ。

 そのまま廊下を抜け、大きな広間へと通される。


「お爺ちゃん、生徒さん達が来ましたよ。」


 そこに座る一人の老人へと呼びかける。

 しかし、その老人の反応は無い。

 その老人の肩を、村長の孫が揺する。


「お爺ちゃん。お爺ちゃん?」


 いくら揺すっても反応はない。

 それどころか、一ミリも動かない。


「村長死んじゃた? …痛っ!?」

「不謹慎ですわよ。」


 レリーアに小突かれた箇所を擦るイリア。

 そうしている間にも、孫が村長の肩を揺すり続ける。


「お爺ちゃん、お客だよ。お爺ちゃん!」

「………ぐがー。」

「あ、寝てる。」

「寝てるのっ!?」

「寝てるんですの!?」


 動かないのは、ただ寝ているだけだった。

 村長は、気持ち良さそうにいびきをかいている。

 しかし、イリアの突っ込みで大きく首が揺れるように。


「んあ? 晩飯か?」

「違います。例の生徒さん達が来てくださいましたよ。」

「ん? おー、そうかそうか。長旅ご苦労じゃったな。」


 生徒達に気づいた村長は、笑いながら自身の膝を叩く。

 そんな村長へと、イリアが質問を投げかける。


「ねぇ、村長さん。何歳なの?」

「わしか? 百歳は越えておるよ。」

「へぇ、長生きじゃん。」

「ほんとだねー。」


 村長の年を聞いて驚くイリア達。

 まさかの年齢は百を越えていた。

 そんな村長は、自信気に笑う。


「元気なのが取り柄じゃからな。まだまだ若いものには…。」

「……?」


 突然黙った村長に首を傾げるイリア達。

 いきなり、力が抜けたように俯く。


「……ぐがー。」

「また寝た!?」


 話の途中で寝てしまったようだ。

 そんな村長の肩を孫が揺する。


「お爺ちゃんっ、お客様の前で失礼でしょ!」

「ん? 敵か! わしに任せろ!」

「なんか始まった!?」


 いきなり飛び上がった村長に突っ込むイリア。

 どうやら寝ぼけているようだ。

 その突っ込みを聞いた村長が意識を戻す。


「あぁ、すまんな。時々、武器を持っていた頃の記憶が甦るんじゃよ。」

「へぇ、村長さんって兵士だったんだ。」

「そうじゃよ? こう見えて、槍を担いでは魔物や山を一突きって…。」

「…って、また寝ちゃったよ。」


 今度は冷静に突っ込むイリア。

 そろそろ慣れてきたようだ。

 そしてまた、孫が肩を揺すりだす。


「お爺ちゃん? まったく。ごめんなさいね。こんな時に。」

「いえ、ご老人の方ゆえの事だと理解しています。」

「あーそうじゃなくって。夜遅くまで釣りをしてたのよ。」

「まさかの寝不足ですの!?」


 よく眠りに落ちるのは、ただの夜更かしが原因のようだ。

 それならば、呆れてしまうのも仕方ない。

 そうして、何度目かの肩揺すりをしていた時だった。

 いきなり、部屋の扉が開かれる。


「た、大変だ! また食料が盗まれた!」

「なんじゃと! 芋をふかし忘れたじゃと!」

「何の話です!?」


 再び寝ぼけた村長が叫ぶ。

 その直後、しばらくの静寂が部屋に流れる。

 

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