第10話 ドッコイ召喚

 囲む魔猿によって、どんどんと追い込まれていく。


「ど、どうしよう。このままだと負けちゃうよ。」

「落ち着きなさい。魔術師の役目は魔法を撃つだけじゃないわ。どうすれば良いかを考えるのよ。」

「考えるって言ったって。」


 唯一の攻撃が効かないのだ。

 これで何が出来るというのだろうか。

 それでも、生徒会のメンバーは諦めていない。


「流石、私が見込んだ生徒ね。そうよ、魔法が撃てる限り諦めない。それが、私達魔術師の誇りよ。」

「へぇ。じゃあ見せてみな、やってみな。大逆転は大歓迎。ほらお前達、お膳立ては任せたぜ?」


 ウォーコングの指示で、周りの魔猿が距離を詰めてくる。

 どうやら向こうは、この状況を楽しんでいるようだ。

 それを見た生徒会のメンバーも動く。


「これ以上、舐められたままではいられないわ。行くわよ! 皆っ!」


 生徒会のメンバー達が魔法を撃っていく。

 しかし、魔猿達にすら全く効いていない。


「やっぱり無理かも。」

「誇りは!?」


 あまりの攻撃の効かなさに、心が折れかけているようだ。

 そうしている間にも、魔猿達は迫ってくる。


「会長、相手の結界をどうにかしないと。」

「分かってるわ。でも、魔族が使う力なんてどうすれば。」


 どうにかしようにも、相手の力が分からない。

 なので、対処のしようがないのだ。

 すると、それを聞いたイリアが自身の指に納まる指輪を見る。


「魔族……もしかして、ドッコイさんなら。」

「ドッコイさん? 確かにあの人も魔族。イリア、すぐに呼んで頂戴っ。」

「わ、分かったっ。」


 同じ魔族のドッコイなら、何か分かっているかもしれない。

 そう信じ前に出たイリアは、指輪を前に掲げる。

 そんなイリアをカレンが止める。


「貴方、危険よ! 下がりなさい!」

「大丈夫です。さぁ、ドッコイさん。来て下さい!」


 そう言いながら、召喚の魔法を起動する。

 すると、イリアの目の前に魔方陣が現れる。

 その魔方陣にウォーコングが気づく。


「いきなりちゃっかり何なんだい? 一体これから何すんだい?」

「会長、召喚魔法です。」

「そうね、何を召喚するというの?」


 一同の視線が集まる中で、魔方陣の光が強くなる。

 そして、中から紫の霧が吹き荒れる。

 更に、霧の中で雷が走る。

 直後、大きな雷が魔方陣へと落ちる。


「きゃっ。」


 その雷に一同が怯える中、魔方陣から複数の光が飛び出す。

 その光があちこちを走ると、一本に収束する。

 そして、収束した光は天へと昇る一本の太い線へと変わる。

 そんな光から、遂に骸骨騎士が姿を見せる。


「……なんか豪華なの来た!?」


 思いがけない光景に、イリアが突っ込みを入れる。

 しかし、そんなイリアとは違い他の者は怯えている。


「こんな凄い召喚初めて見たわ。まさか、魔王!?」

「魔王は既にいません。しかし、それぐらいのものと考えて良いのかもしれません。」

「へ、へへ、やるじゃん、良いじゃん。え? マジで?」


 どうやら、召喚時の光景に上級の魔族だと悟ったようだ。

 その偉大な光景に、言葉を失っている。

 そして、レリーアもまたイリアの肩を慌てて掴む。


「貴方っ、これは一体っ! まさか、ドッコイさんはとんでもない存在なんじゃ。」


 気が動転しているのか、必死になってイリアの肩を揺するレリーア。

 しかし、身に覚えが無いイリアもまた必死になって首を横に降る。

 それを見たレリーアは、呆気にとられたかのように固まる。


「………………え?」


 イリアの反応で悟ったのだろう。

 固まったまま動かない。

 そんな二人の向こうで、ドッコイが両手を広げる。


「我を呼んだのは…誰だぁっ!?」

「「ひいっ!?」」


 怯える一同に囲まれるように、ドッコイは地面に降り立つ。

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