第7話 魔猿に乗っ取られた町

 多くの町民が猿のような魔物から逃げている。

 どうやら、イタズラをされているようだ。


「レリーアちゃん、今日何かイベントあったっけ。」

「あるわけ無いじゃない。そもそもどんなイベントよ。」

「じゃあ…そうだ! きっとこれは夢だよ!」

「違うわよ、現実を見なさいな。」


 あまりの光景に、現実逃避をするイリア。

 しかし、目の前の光景は夢でも何でもない。

 これら魔物は、全て本物なのだ。


「だよねー。じゃあ、このお猿さんみたいなの全部本物って事?」

「そうね。魔猿そのもので間違いないわ。」

「魔猿?」

「えぇ。群れで旅をして巣を探す魔物よ。」

「へー、そうなんだ。」


 ここにいる魔物達は、全てが魔猿だ。

 旅の果てに、この町へとたどり着いたのだろう。


「って、この町が巣にされちゃったって事!?」

「まぁ、そうなるわね。」


 旅をするのなら、同じ場所には留まらない筈だ。

 しかし、この場所で好き勝手暴れている光景が全てを物語っている。

 そんな魔猿の一匹が、二人の上から花びらを振りまく。


キキッ。


「とにかく、こうなった以上は買い物は出来ないわね。私達は帰りましょう。」

「ええっ、放っておくの!?」

「当たり前でしょ。町の事なら兵士の仕事よ。私達の出番は無いわ。」


 町を守る為に兵士という者が存在する。

 なので、ただの一生徒がでしゃばる必要は無いだろう。

 そんな二人へと、魔猿が投げた布が被さる。


ウキキッ。


「と…とにかく、ここにいるのは無用よ。早く帰りましょ。」

「でも、兵士の人達はいないよ?」

「どうせ、どこかで道草でもしてるんでしょ。いずれ来るわよ。」


 これだけの騒動だというのに、兵士の一人も見当たらない。

 しかし、本当に遅れているだけなら問題は無い筈だ。

 すると、二人の顔に卵が投げつけられる。


ウキキキ…。


「潰す!」


 我慢の限界が来たのか、レリーアが魔猿へと飛びかかる。


「言ってる事が違うよ!?」


 そんな突っ込みを無視しながらも、魔猿へと手を伸ばすレリーア。

 しかし、その手は簡単に避けられてしまう。


ウキャ。


「待ちなさい!」


 それでも再び手を伸ばす。

 それでも再び避けられる。


「このっ! えいっ!」


 伸ばしては避けられての繰り返し。

 飛び込むように迫るのも避けられると、そのまま地面へと突っ込む。

 すると、ついには指を指されて笑われる。


ウキャキャキャ。


「だ、大丈夫!?」


 倒れたレリーアへと寄り添うイリア。

 しかし、レリーアの怒りは限界だ。


キャキャッ。


「ぐうっ、火よっ!」

「レリーアちゃん!?」


 ついにキレたレリーアが魔法を放つ。

 それでも、魔猿は避けてしまう。


「レリーアちゃん! 町中で魔法は禁止だよ!」

「緊急事態よ! 許されるわ! 火よっ!」


 町中で魔物が現れては、魔法を使うのも仕方ないだろう。

 だからといって、攻撃が当たる物ではない。


「風よ! 土よ! 水よーーーっ!」


 あの手この手で攻撃をするも当たらない。

 どれも当たる気配無く避けられる。

 そして、ついにレリーアが魔法を止めて肩から息をし始める。


キャッキャッ!


「はぁはぁ。許しませんわよ。絶対に。」

「落ち着いてレリーアちゃんっ。相手の思うままだよっ。」

「わ、分かってますわ。どうにか作戦を考えなくては。」


 このまま続けても、いずれこちらが力尽きるだけだろう。

 そうならない為にも、何か策が必要だ。

 その時、近くの建物から影が落ちる。


「どうやら苦戦しているようね。レリーアさん。」

「こ、この声はっ…。」


 影と共に声もまた聞こえてくる。

 その声に、イリアが反応する。


「だ、誰っ!」


 そう言いながら、声がする方を見るイリア。

 その先では、四つの人影がこちらを見下ろす。


「助けに来たわよ! 後はこの生徒会に…任せなさい!」


 そう言って、四つの影がポーズを決める。

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