第4話 黒幕との戦い

 とある山にある洞窟の奥の松明で照らされた空間。

 そこに、人の姿をしたウルフがいた。

 そいつは、沢山の何かが入った箱を見る。


「順調だな。ここを狩り場に選んで正解だった。一段落したら、みんなで干してある肉でパーティーだな。」


 ニヤリと笑い、鋭い牙をちらつかせる。

 その目に映るのは、沢山のお金と食料だ。

 その光景に満足していると、一匹のウルフが飛び込んでくる。


ワウワウッ!


「ん? どうかしたか?」


ワウワウワウッ!


 飛び込んできたウルフは、必死になって何かを叫んでいる。

 当然、同じウルフであるそいつには何を言っているのかが分かる。


「なに? 侵入者だと? そんなのおっぱらって…。」


 何かを言おうとした瞬間、ドッコイが飛び込んでくる。


「お邪魔しまーーーーーーす!」

「んぎゃあああああああああああっ。」


 急に現れるドッコイを見て叫ぶ人型のウルフ。

 その時にはねのけられたウルフの群れが洞窟内に転がる。

 その後ろから、イリアとレリーアも現れる。


「本当に正面突破しちゃったよ。」

「無茶苦茶な方ですわね。」

「ふははっ。この程度、恐れるに足らずっ!」


 ポーズを決めて自信を見せつけるドッコイ。

 そんなドッコイ達を見た人型のウルフが慌てながら立ち塞がる。


「て、てめぇら何なんだっ。ってか、どうしてここにっ。」

「決まっているだろう。沢山のウルフという異常事態。不自然にも程がある。ならば、率いている黒幕がいると思うのは当然だろう。」

「それさえ分かれば後は簡単です。作戦に失敗したウルフは、黒幕に報告へ向かう。だから、わざと逃がして後を追わせて貰いましたわ。」

「そういう事です!」

「……貴方は何も知らなかったでしょ。」

「えへー。」


 異常な事でも、必ず裏には原因がある。

 それを察して動いていたのだ。

 すると、ドッコイが人型のウルフを指さす。


「お前にはもう逃げ場はない。大人しく観念しろ。」

「逃げ場だと? ふざけるな。しょせんは人間、この人狼であるウルフマンの私に…。」

「火よ!」「火よ!」

「んぎゃあああああああああああっ。」


 間髪いれずに放ったイリアとレリーアの二人の魔法が炸裂。

 何かを言おうとしたウルフマンへと襲いかかる。


「あっつあっつあっっっつ。」


 それを受けたウルフマンは、跳びはねながら駆け回る。

 そして、火が収まると同時に怒ったように指をさす。


「てめぇら! いきなり攻撃するのは卑怯だろ!」

「ふんっ。犯罪者相手に卑怯も何もないですわ。」

「く、くそーっ。」


 相手は、強盗を繰り返す犯罪者のトップだ。

 そんな相手に合わせる必要などはない。

 さらに二人は、魔法を放つべく手を構える。


「もう一発ですわ。」

「させるかっ。お前達っ!」

「なっ。」


 ウルフマンの指示で、部下のウルフが三人を囲む。

 それに対処すべく手をウルフへと向ける。

 それを見たウルフマンが笑う。


「どうした? 攻撃しないのか? その瞬間に、そいつらがお前達を襲うがな。」

「くっ、卑怯なっ。」

「お互い様だ。さぁ、今度はこっちの番だぜっ。」


 肩を回しながら迫るウルフマン。

 そちらの対処をしようとすると、周りのウルフが襲いかかる。

 どうする事も出来ない。

 そんな中で、ドッコイが懐に手を入れる。


「それはどうかな?」

「なに?」


 ニヤリと笑いながら、懐から大量の干し肉を投げ出す。


「くらえっ、干し肉の雨っ。」

「なんだとーーーーーーーっ!」


 その干し肉に反応したウルフが嬉しそうに飛びかかる。

 ウルフマンの指示は意識の外だ。


「くそっ、まさか準備をしていたとは。」

「うむ、外に干してあった。」

「俺が干してた奴じゃねぇかーーーーーっ!」


 まさかの事実に絶叫するウルフマン。 

 パーティー用に干してあった奴だ。

 こんな事もあろうかと、持ってきていたのだ。


「くそっ。楽しみにしてたのによっ。」

「うむ。美味しかったぞ!」

「聞いてねぇよっ! ってか、食ったのかよ! ってか、そのなりで食えるのかよっ!」


 楽しみにしていた干し肉を取られたのだ。

 怒ってしまうのも仕方ない。

 その時、イリアが手を上げる。


「やっぱり、生より干したのが好きなんですかっ?」

「今する質問ですの!?」

「え? あぁ、まぁな。だってほら人狼だし。生は苦手というか。」

「答えた!?」


 人が混じっているので、生で食べるのは苦手なようだ。

 そんなウルフマンをドッコイが殴り飛ばす。


「でも見た目はウルフだろーーーっ!」

「ぐあーーーーっ!」

「殴った!?」


 殴られたウルフマンは、高く飛んで地面に落ちる。

 その横で、ドッコイが拳を戻す。


「ちなみに、俺も干したのが好きだぞ。」

「どうして今っ!?」

「私も干したのかなー。」

「貴方は人間っ! 当たり前でしょ!」


 レリーアの突っ込みが洞窟に響き渡る。

 しかし、これでウルフの群れは動けない。

 そんな事もあり、手の構えをウルフマンへと向け直す。


「はぁはぁ。とにかくっ、これで形勢は逆転ですわね。」

「ぐうっ。ふ、ふふふ、ふははははははっ! それはどうかな?」


 追い込まれたというのに、ウルフマンは笑いだす。

 それを見たレリーアが眉を潜める。


「何ですって? まだ何かあるのですか?」

「そうだとも。こいつを見ろっ!」


 そう言ってウルフマンが取り出したのは、紐でまとめられた筒状の物。

 そこから、一本の紐が伸びている。

 その姿はまさに…。


「ば、爆弾っ!」

「何だとっ!」


 どこから見ても爆弾そのものだ。

 それを持つウルフマンがニヤリと笑う。


「そうさ。もっぺん火の魔法を放ってみな。そしたらこいつはドカンだぜ?」


 こんな狭い場所で使えば、一貫の終わりだろう。

 しかし、そんなウルフマンをレリーアは呆れた目で見る。


「でも、それって貴方もでは?」

「……あ。」


 爆発すれば、当然ウルフマンも終わりだろう。

 それに気づいたウルフマンが固まる。


「じゃあ、一旦休戦して外に…。」

「させるかーーーっ!」

「んぎゃあああああああああああっ!」


 外へと向かおうとしたウルフマンを殴り飛ばすドッコイ。

 殴られたウルフマンは、そのまま松明へと倒れ込む。


「残念だが、逃がす訳にはいかない。」

「くそう。どうすりゃ良いんだっ。」


 倒れたウルフマンは、抵抗する手段がない。

 それでも、何かないかと探している時だった。


「あ! 爆弾! 皆っ、爆弾見て!」

「え?」「え?」「え?」


 イリアが指さす方を見る三人。

 ウルフの群れもまた爆弾を見る。

 すると、そこには松明の火が紐に移った爆弾が転がっていた。


「あ…。」

「「「あーーーーーーーーーーーっ!」」」


ワオーーーーーーン!


 それを見た一同が一斉に叫ぶ。

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